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【衝撃インタビュー】「親日売国奴」と中国を追われた漫画家・王立銘氏「今も政治警察と『お茶を飲む』悪夢を見る…」

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「親日売国奴」と中国を追われた漫画家・王立銘氏「今も政治警察と『お茶を飲む』悪夢を見る…」

衝撃インタビュー更新

 中国のインターネット上に政治風刺漫画を発表したことで日本に事実上の亡命を余儀なくされた中国人漫画家、王立銘(おうりつめい)さん(42)が、月刊誌「新潮45」(新潮社)で中国政治を題材にした漫画の連載を始めた。最新の10月号では、習近平国家主席が肉まんを食べて庶民派をアピールしたエピソードなどを紹介し、政権が個人崇拝色を強める姿を皮肉っている。昨年8月、商用で妻と日本を訪れていた最中、中国共産党機関紙傘下のオピニオンサイトが王さんを「親日の売国奴」と名指しで糾弾する記事を掲載。多数の共産党系サイトにも転載されたことから身の危険を感じ、帰国を断念した。圧力に屈せず情報発信を続ける王さんに、中国当局による言論弾圧の実態や日本での生活について聞いた。(磨井慎吾)

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 --現在の仕事は

 「日本で『新潮45』と『ニューズウィーク日本版(オンライン版)』という2媒体に連載し、米国でも2媒体に漫画を描いています。あと臨時の仕事もあるので、経済的にはようやく暮らしていけるようになりました」

 --“変態辣椒(ビエンタイラージャオ=激辛トウガラシ)”という中国での筆名の由来は

 「2000年に適当に付けた名前です。『変態』は中国の口語で『すごい』という意味があります。後に政治漫画を描こうとしたときにこの名前を思い出し、自分の描きたいものにぴったりではないかと考え、この名前にしました(注・日本では『変態』という言葉は誤解を招くため、単に『辣椒』としている)」

 --漫画を描き始めたのは

 「もともと、子供の頃から絵を描くのは好きでした。政治漫画を本格的に描き始めたのは、2009年からですね。最初は漫画を職業にするつもりはなく、遊びで描いていました。当時は広告会社に勤めていて、挿絵やコマーシャルの絵コンテを描く仕事をしておりましたので」

 --中国で政治漫画を描くリスクは感じなかったか

 「最初の頃は、それほど感じていませんでした。たくさん描けば、目を付けられるだろうという程度で。もっとやれ、と応援してくれる人もあれば、大丈夫かと心配する声もありました」

 --最初に当局に脅されたのは

 「2011年のことでした。中国には“お茶を飲まされる”というスラングがあるのですが、これは政治警察が市民を呼び出し、尋問する際によく使う口実のことを指します。ネットの友達が私の絵を使って中国の選挙改革を訴えるTシャツを販売したのですが捕まってしまい、そこから私の所にも政治警察が来ました。結局、11年だけで3回、“お茶を飲まされ”ました。その後もたびたび尋問や身柄の一時拘束を受けました。彼らは相手に精神的圧迫を与えるため、いつも深夜2時ごろ突然家に来るのですね。この恐怖感は忘れられません。日本にいる今でも時々、夜中に誰かが来る悪夢を見ます」

 --度重なる当局の脅しを受けて、漫画をやめようと思ったことは

 「ありません。最初に“お茶を飲まされ”たときに思ったのは、この国を離れたい、ということでした。その後も捕まるたびにその気持ちは強くなり、漫画をやめる気は起こりませんでした。ただ、家族に圧力が及んだときには、気持ちが揺らぐこともありました」

 --日本に生活しての印象は

 「とてもいい国です。日本は世界一安全な国だと思います。道を歩いていても心配ありませんし、食べ物もとてもおいしいです」

 --国会前デモを見物に行ったとか

 「6月から7月にかけて、自作の漫画を持参して3回行きました。3回目のときの漫画は『フリーダム・イズ・ノット・フリー(自由はタダではない)』という題で、ハリネズミ(日本)が針(防衛力)をむしられるのを、後ろでパンダ(中国)がフォークとナイフを持って待ち構えている、という構図です。ただ、このときはデモ隊の人からとても無遠慮な態度でからまれて、あわやケンカ寸前というところで、警察官に助けられました」

 --そのデモ参加者に何か言うとすれば

 「中国や北朝鮮という対外的に軍拡を続け、自国民に対してもひどいことをしている国が隣にあるということを、日本人はもっと知るべきだと思います。そういう国から来た者として。あと、日本人は平和についての考え方が単純になっているのではないかと思います。平和はもちろん大事です。しかし周りがそういう状況の中で、自分だけが武器を捨てても平和になるわけではない。自分を守るものは必要です」

 --日本人と話して感じることは

 「自由のある環境で育った日本人や米国人と話をしていると、中国政府がどれだけひどい弾圧をしているのか、あまり想像ができないのですね。中国国内の人は、私が中国政府が言論弾圧や自由の制限を行っていると言うと、それは日本政府も同じだろうと反論します。日本人でもそういうことを言う人がいるのですが、私から見ると、日本政府と中国政府の規制というのは、根本的に全く次元が違うものですね。たとえば中国国内で自分の意見を書いて掲げるとすぐに逮捕されますが、日本ではプラカードに『安倍はファシストだ』と書いても全く自由です。まあ、安倍首相がファシストだというのはずいぶん誇張した言い方で、私は習近平(国家主席)こそが本当のファシストだと思います」

 「『安倍はファシスト』という冗談めいた表現が流行っているので思いついたのですが、もし安倍首相がある朝起きたらヒトラーのようにチョビヒゲが生えた本当のファシストになっていて、ヒトラーのような統治を始めたら、という漫画を考えています。中国共産党のやり方は本物の独裁なので、もしその統治方法がそのまま日本に移されたらどうなるんだろう…というアイデアです(笑)」