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【安倍政権考】京大名誉教授に噛みつく菅元首相 党内では孤立、場外で“意気軒高”の痛々しさ

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京大名誉教授に噛みつく菅元首相 党内では孤立、場外で“意気軒高”の痛々しさ

安倍政権考更新

 永田町ではすっかり影の薄くなった民主党の菅直人元首相は、思わぬところで熱心に活動していた。菅氏の「反原発」運動を「反日本」運動と喝破した中西輝政京都大名誉教授に、ブログで「学者の論文とも思えない」と噛みつき、論争を続けているのだ。「イラ菅」ぶりは健在のようだが、民主党からは「最高顧問」の肩書を剥奪されたままであり、党内で孤立の度合いを深めている。

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「反日本」運動

 中西氏は月刊誌「Voice」(PHP)の4月号で「『反原発』のアナーキズム」と題した論文を掲載した。

 それによると、「反原発」運動について「人びとの不安に乗じて原発アレルギーを高める半面、わが国が置かれた深刻なエネルギー・電力不足の危機には目をつぶる、これはまさに『反日本』運動といってよい」と強調した。その上で、菅氏が平成23年5月6日に法的根拠なく中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の停止を要請したことをこう批判した。

 「市民運動家としての自らの信念である『反原発』を国家的政策の根幹に据えようとした」

 「法律ではなくポピュリズムによる情緒的な世論を形成し、その『空気の圧力』によってすべての原子力発電所を止めた菅氏のこの禁じ手が、法治国家ではありえない無法状態を生み出してしまった」

 さらに、菅氏が直近の2度の衆院選において選挙区で敗れたことを念頭に「民意に2度もNOを突き付けられ、政治家としてすでに『終わった』人物であるにもかかわらず」とトドメを刺した。

 菅氏は3月12日付のブログで反論した。タイトルは「中西輝政氏の暴論」-。

 「『反原発』を主張することが『反日本』だとすれば、原発ゼロを実現しようとしているドイツのメルケル首相は『反ドイツ』ということになるのか。あまりにも非論理的で、学者の論文とも思えない」

 「いまだに『原発は安全で安価でクリーン』という原発神話を信じているのだろうか」

 中西氏は保守派の論客として知られ、安倍晋三首相と考え方が近い。首相が今年夏に発表する戦後70年談話に関する有識者会議「21世紀構想懇談会」のメンバーでもある。それだけに菅氏が必要以上に闘争心をかき立てられた可能性はある。

脱原発で国際連携?

 菅氏は最近、海外で脱原発を説くなど、“国際連携”に余念がない。3月19日にはソウルで講演し、「原発を使うのか、別の道を取るのかが世界で問われている」と強調。脱原発を主張する最大野党の新政治民主連合の幹部とも会談した。2月24日には欧州の非政府組織(NGO)の招きを受けてパリで講演し、「原発は原爆と同じように多くの人に被害をもたらす」と不安をあおった。

 菅氏は、党内で無役ということもあり、自由気ままな発言が許されていると思っているようだ。菅氏は平成25年8月に参院選東京選挙区で無所属候補を支援したため、党員資格停止3カ月の処分を受け、最高顧問の役職を解任された。その後、処分は解除されたが執行部は最高顧問に復帰させなかった。他の党所属議員から「最高顧問に戻すなら離党する」との声が相次いだからだ。

 いまや党内で菅氏のことが話題に上ることはほとんどなく、ある中堅は「元首相なんだからもっと大きく構えてほしい」とため息をつき、執行部も「静かにしてほしい」(幹部)のが本音だ。

 それでも菅氏は「何とか出させてほしい」と国会で質問する機会を与えるよう求め、3月10日に衆院予算委員会分科会に質問に立った。「当時の首相としていまなお責任を感じている」と殊勝な言葉を発したが、その後に見せた原発政策に関し安倍政権を追及する姿は、市民運動家そのものだった。

 民主党出身の元首相といえば、鳩山由紀夫氏が外務省の自粛要請を振り切ってウクライナ南部クリミア半島に渡り、クリミアのロシアへの編入を「ウクライナ憲法の規定に従い、平和的かつ民主的プロセスにのっとって行われた」と発言したり、日本の対露制裁を「日本政府は、米国や欧州の国々の例に追従するよりも、自主的な状況評価をすべきだ」と批判したりして物議を醸したのは、記憶に新しいところだ。

 菅氏もいたって“意気軒高”のようで、本人にとってそれはそれで結構なことだ。しかし、民主党はそうはいかない。鳩山氏の場合は「今は少なくとも民主党に属している方ではない」(枝野幸男幹事長)と反論できるが、菅氏は現役の民主党議員だ。そうした言動が民主党にとって「大迷惑」になっていて党の支持率低迷の一因になっているという自覚がないのは、悲劇であり喜劇だとしか言いようがない。(政治部 坂井広志)