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【経済インサイド】BMW捉えた 「アウディ」が世界中で売れる理由 驚異の「高利益率」

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BMW捉えた 「アウディ」が世界中で売れる理由 驚異の「高利益率」

経済インサイド更新

 世界販売が1000万台を超え、王者・トヨタ自動車を射程に入れた独フォルクスワーゲン(VW)グループ。その牽引(けんいん)役が高級車ブランドのアウディだ。この5年で販売台数は2倍近くになり、高級車首位のBMW(「ミニ」除く)に7万台差に迫った。10%前後の高利益率を維持し、収益面の貢献も大きい。新興国展開やモデルラインアップの拡大など、さらなる成長にアクセルを踏んでいる。

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200万台目標前倒し

 「今年も過去最高を目指す。販売台数200万台は(目標としていた)2020年より前に達成したい」

 3月10日、ドイツ・インゴルシュタットのアウディ本社で行われた記者会見。ルパート・シュタートラー最高経営責任者(CEO)は世界各国から集まった記者たちを前に自信を見せた。

 14年の世界販売は前年比10.5%増の174万台で過去最高を記録。リーマン・ショック後の09年(95万台)から右肩上がりで、14年に181万台だったBMWを追い詰めた。

 躍進を支えているのは、BMWとメルセデス・ベンツを抑えて首位に立つおひざ元の欧州に加え、販売台数の約3割を占める中国だ。14年は17.7%増の58万台で、高級車ブランドとして初めて50万台を超えた。

 「成長ドライバーは現地で生産しているモデル」

 シュタートラー氏は説明する。早い段階から現地生産に乗り出し、中国人の好みに合うよう、ボディーを長くして後部座席にゆとりを持たせた「A6」や「A4」など現地専用車が支持されている。

 「Q5」などのスポーツ用多目的車(SUV)「Q」シリーズも中国を含めた世界で好調だ。「シングルフレーム」と呼ばれる大型グリルに象徴されるデザインと、独自の四輪駆動システム「クアトロ」などの先進技術がブランドを際立たせている。

10%前後の高い利益率

 特徴的なのが、営業利益率の高さだ。14年は大型投資などで前年より低下して9.6%となったものの、10年から9~12%を絶えず維持する。

 アクセル・ストロトベック最高財務責任者(CFO)は「(A6やA8など高価格帯の)C、Dセグメント(中・大型車)にフォーカスし、価格は競合他社並み、場合によっては、より高く設定できているためだ」と解説する。

 設計の標準化と主要部品を共通モジュール化する戦略「MLB」の効果も見逃せない。縦置きエンジン搭載車が対象で、00年代後半からA4やA5などに採用。開発・生産コストの削減に加え、市場のニーズに合わせた多様な商品開発などを可能にする。その思想はVWが力を入れる「MQB」にも発展している。

 ただ、ストロトベック氏は「(利益は)新しい技術に投資する」と強調する。今後5年間の投資額は240億ユーロ(3兆1000億円)を予定。将来の成長に向け、自動運転をはじめとする先進技術や新型車の開発に充てる。

新たにQ1やQ8も

 今年も第2世代のMLBを採用した「Q7」を皮切りに、スポーツカー「R8」、主力の「A4」などで新車攻勢をかける方針だ。16年にはニューモデル「Q1」、その後「Q8」も投入。52あるモデル数も5年以内に60に増やす。

 生産面でも、中国の次の成長市場と目されるブラジルに工場を建設。新設するメキシコからは、米国市場にSUVを供給する計画だ。

 VWの次期CEO候補の1人とも目されるシュタートラー氏は「グローバル企業としてさまざまな地域のニーズに応えていく」と手綱を緩める気配はない。

 一方、VWを迎え撃つトヨタ。高級車ブランドである「レクサス」の14年の世界販売は58万台で、アウディに大きく差をつけられている。

 米国と日本ではかろうじてアウディを上回るが、中国をはじめとする新興国では存在感を発揮できていないのが実情だ。

 15年にVWが世界販売でトヨタを抜く可能性が高まる中、それぞれの高級車ブランドの成長も、2強の勝負の行方を左右しそうだ。

(田村龍彦)