産経ニュース for mobile

【経済インサイド】「木くずや汚泥から水素!?」バイオマス技術で燃料電池車への供給もくろむ 東京のベンチャー企業に海外も熱い視線

記事詳細

「木くずや汚泥から水素!?」バイオマス技術で燃料電池車への供給もくろむ 東京のベンチャー企業に海外も熱い視線

経済インサイド更新

 木くずなどのバイオマス(生物資源)から水素を作り出すベンチャー企業の技術が注目されている。水素は天然ガスや石油などの化石燃料から作るのが一般的で、採掘時や製造時の二酸化炭素(CO2)排出は避けられないが、バイオマスは木が成長する過程でCO2を吸収するため、より環境負荷が少ない。森林の多い日本では原料を調達しやすいのも魅力だ。自らの手で、自動車や家庭用燃料電池の燃料に水素を使う「水素社会」を引き寄せようとしている。

 「先日はフランスの大手電力会社幹部が話を聞きに来た。近くマレーシアの政府関係者も視察に来る予定だ」

 ジャパンブルーエナジー(JBEC、東京都千代田区)の堂脇直城社長は、同社の技術に対する関心の深さに目を細める。

 JBECは、木くずや下水の汚泥から水素を取り出すことを目指しているベンチャーだ。ブルータワーと呼ぶ独自のプラントによって水素を作り出し、燃料電池車(FCV)などに供給することを視野に入れている。

 ブルータワーは、木くずを熱分解器にほうり込み、高温で蒸し焼きにしてガス化。それを水蒸気と混ぜて水素濃度の高いガスに改質した後、分離装置に通して高純度の水素ガスを得る一方で、ガスエンジンやガスタービンで発電することもできる。

 木くずや汚泥から水素が作れること自体は以前から知られていた。しかし生物資源は高温で熱すると副産物として液状のタールが発生する。液状タールはプラント内部にとどまって目詰まりの原因となり、故障を誘発するため、徹底的に分解しなければならない。

 そこで同社は、装置内にヒートキャリアと呼ぶセラミックス製の小さな球をいくつも入れ、循環させる手法を採用。球が移動することで、装置内の「熱ムラ」を抑え、タールを分解できるようにした。

 ブルータワーの基本技術はドイツで生まれた。堂脇社長は、地域活性化のコンサルティングを行う中でこの技術と出合い、資金をかき集めて特許を取得。その後は独自に研究を重ね、一昨年にはより高温でガス化できる3つ目の試験プラントを群馬県渋川市に建設。現在は、日米欧を含む主要国の大半で特許を保有するという。

 水素を使うには、貯蔵や輸送のインフラを一から整備しなければならない。その費用は、FCV用水素ステーションだけでも1カ所当たり5億円かかるとされる。このため当面は大都市での供給にとどまる見通しで、地方まで行き届くにはかなりの時間がかかるとみられている。

 もっとも、JBECの技術は森林資源が豊富な地方でも威力を発揮する。同社は来年春までに、石川県輪島市と群馬県前橋市で商用プラントを稼働させる計画。ほかにも岩手県宮古市など2、3カ所で建設を検討している。堂脇社長は「地震でライフラインが途絶えた際の非常電源にもなる。地産地消のような環境を築きたい」と、地方における製造・供給態勢の早期構築に意欲をみせる。

 商用プラントは発電規模3000キロワット時を想定。水素社会の本格到来には時間がかかるとみて、まずは電力を販売し、収益基盤を確立することに全力を注ぐ。改質ガスの3%を水素としてサンプル用に製造するが、それだけでも燃料電池車200台分をまかなえるという。

 試験プラントに比べて規模が大きく、予期せぬ初期トラブルをどう抑えるかが課題だが、原料確保や約20億円という建設資金の手当ても含め、基本的にはクリアできている。堂島社長は「将来的には水素に軸足を移しバイオ水素の供給業者になりたい」と夢見る。

 昨年12月にはトヨタ自動車が世界初の一般向けFCV「ミライ」を発売し、納車まで3年待ちの人気となっている。一方、2020年開催の東京五輪では、新技術の「ショーケース」としてFCVや家庭用燃料電池の活用が想定される。堂脇社長は「水素の可能性を訴えるトヨタの姿勢は大歓迎。五輪も世間にアピールする絶好の場になる」と語り、水素社会の構築に対するムードの盛り上がりに期待する。(井田通人)