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【スポーツ異聞】「照明暗すぎる」「大会使用球を統一して」卓球“モノ言う王者・水谷隼”の問題提起

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【スポーツ異聞】「照明暗すぎる」「大会使用球を統一して」卓球“モノ言う王者・水谷隼”の問題提起

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卓球全日本選手権でバックハンドを打つ水谷隼=東京体育館 1月に開かれた卓球の全日本選手権。男子シングルスで日本のエース、水谷隼(ビーコン・ラボ)が2連覇を飾り、優勝回数を歴代単独2位の「7」に伸ばした。決勝後、水谷は喜びの声だけでなく、大会運営への不満を口にした。「物言う王者」の叫びは関係者にどう届いただろうか。(奥村信哉)

 水谷は過去にもラバーの性能を向上させる「補助剤」について問題提起し、国際試合の出場を取りやめて解決を求めたことがある。今大会でも黙ってはいられない事態に直面した。1つは、今大会からプラスチック球が採用された使用ボール。安定した材質や長いラリーにつながる利点を踏まえ、従来のセルロイド球から切り替えが進む世界の趨勢(すうせい)を踏まえた措置だったが、問題はその種類の多さにあった。

 日本協会が公認している7種類のボールがすべて「大会公式球」となったのだ。予選から特定のボールを使用し続けるサッカーやバレーボールなど他の球技では考えにくいルールだ。選手は試合前に集合場所で希望するボールを1または2種類を選択し、相手と合致しなかった場合はじゃんけんで決める。大会プログラムでは「メーカーごとにわずかに打球感に差がある」と紹介されているが、契約するメーカーの製品のみで練習することの多いトップ選手にとって、その違いは「わずか」ではなかったようだ。

 水谷は特に1社のボールの性質が他とは大きく異なったと主張、フルセットにもつれた5回戦の苦戦理由にも挙げた。実際、準決勝、決勝では難敵相手に圧倒的な強さでストレート勝ち。その言葉を実証した形だ。

 日本協会の担当者は「公認している以上、1種類に決めることはできなかった。事前に入札で決めることも可能だが、そうすると力のあるメーカーが有利になる」と話す。競技の普及を図る上で各メーカーの協力を仰ぎたい事情があるにせよ、卓球日本一を決める権威のある大会で、選手の力量差以外に勝敗を左右する要素が生ずるのは好ましいこととはいえない。水谷は「実力よりボールで結果が変わりそうな試合が多かった。統一してほしい」と次回大会での再考を求めている。

 もう1つの大きな不満が、暗い照明。男女シングルスの準決勝、決勝が行われた最終日の演出だ。「昨年、一昨年はあそこまで暗くなかったと思う。あの光では見づらい」と水谷は訴える。

 女子シングルス準優勝の森薗美咲(日立化成)も「自分の影が映るし、すごくやりにくい。『みんな普通にやれてるのかなあ』って思うほど違和感があった」と打ち明けた。ショーの要素を強める演出はスポーツ界に広まっており、水谷や女子シングルスの石川佳純(全農)らが制した昨年12月の卓球ワールドツアー・グランドファイナルも同様の環境で行われた。「ラリー中に(照明が)ついたり消えたりして、もっとひどかった」と振り返る水谷は「変えていきたいのは分かる」と、ファン層拡大のため華やかな演出が好まれる傾向に一定の理解を示す。

 だが、「見せるのを意識するあまり、選手のことを考えないことが多くなった。選手の意見を何も聞いていない」。ボールの問題を含め、せめて国内大会では、選手の声をできるだけ反映してほしいとの立場を貫く。来年の大会では斎藤清の持つ男子シングルス最多優勝記録(8回)に挑む水谷。25歳の王者に限らず、選手に不必要なストレスを与えない運営が求められる。

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