産経ニュース for mobile

【ビジネス解読】「月に太極旗をはためかせる」朴槿恵大統領“公約”の韓国悲願「ロケット開発」の冷ややか“理想と現実” 人工衛星「宇宙迷子」のショック

記事詳細

【ビジネス解読】「月に太極旗をはためかせる」朴槿恵大統領“公約”の韓国悲願「ロケット開発」の冷ややか“理想と現実” 人工衛星「宇宙迷子」のショック

更新

韓国初の人工衛星を搭載して打ち上げられた「羅老号」=2013年1月30日午後、韓国南部・全羅南道の「羅老宇宙センター」(聯合=共同) 「2020年には月に太極旗がはためくだろう」-。12年12月の韓国大統領選で、朴槿恵候補がぶち上げたこの公約は、「大気のない月で?どうやって?」といういじわるな“突っ込み”とともに、今も韓国ウオッチャーの語り草となっている。

 朴氏の言葉を額面通り受け取れば、韓国は2020年、つまり東京で五輪・パラリンピックが開かれている年に月面着陸を目指し、世界の度肝を抜こうとしている、ということになる。国際社会には軽く受け流され、日本でもほとんど報じられることはないが、計画自体は朴政権の中で脈々と受け継がれてきた。

韓国5000年の歴史で初の快挙?

 まずは、韓国政府が描く宇宙開発戦略を念のため、おさらいしておこう。

 17年12月、独自開発のロケット「KSLV-2」を試験発射▽19年12月と20年6月に本体打ち上げ▽そして、同年中に無人月探査船を飛ばし、月面にいたる-というのがおおよその青写真だ。これに加え、中央日報の報道によると、韓国・国家宇宙委員会は昨年11月26日、「30年以降に火星と小惑星探査に乗り出す」と発表している。

 随分と話が大きいが、まあ夢はでっかいほうがいい。いや、他国の人間がそんなことを言うのは失礼かもしれない。韓国国民にとっては、宇宙開発は決して夢物語ではないのだ。

 朴氏の大統領就任直前の13年1月30日。この日は韓国人にとって、忘れられない歴史的記念日となった。

 この日、全麗南道の羅老(ナロ)宇宙センターから、韓国初の宇宙発射体となる「羅老号」が打ち上げに成功。このロケットに搭載された人工衛星「羅老科学衛星」も無事、目標の軌道に投入された。羅老号の打ち上げは過去2回失敗していて、文字通り「三度目の正直」だった。

 東亜日報は翌31日付の社説で「(韓国?)5000年の歴史の中での初の宇宙進出だ」「胸がいっぱいで感慨極まりない」「羅老号の羽ばたきが、国民統合のきっかけになることを願う」などと論評し、それはもう手放しの喜びようだった。

 しかし、社説は「厳密に言えば、羅老号は『半分の成功』であることを忘れてはならない」とも指摘した。実は、羅老号の1段ロケットはロシア製。韓国製の2段ロケットは推力、比推力ともに低性能で、低軌道(LEO)衛星の投入能力は100キロ程度に過ぎない。ちなみに、羅老号と総質量が同規模の日本のM-Vロケットは1850キロのLEO投入能力を誇る。

衛星が迷子に?

 それでも、羅老号の打ち上げ成功は韓国国民を大いに勇気づけたことだろう。

 ところが、この“快挙”から1年8カ月が経過した昨年9月、韓国の月刊誌「科学東亜」に衝撃的な記事が掲載された。

 記事は「羅老号に搭載され、宇宙に打ち上げられた『羅老科学衛星』が寿命を迎え、宇宙迷子として地球の周りを漂っているという事実が、本誌の取材によって確認された」と報じる。

 さらに、同衛星の開発・運営を統括するカン・ギョインKAIST(韓国科学技術院)人工衛星研究センター衛星応用研究室長の「(14年)4月から羅老科学衛星との通信ができず、現在は事実上、衛星の運用を停止した状態」とのコメントを掲載した。

 そもそも、人工衛星には設計寿命というものがあり、羅老科学衛星のそれは1年とされていた。ゆえに、1年8カ月での任務終了はさほど不思議ではないが、問題は役目を終えた衛星が打ち上げ国の制御ができない状態にあることだ。

 このような「宇宙ごみ」問題はなにも韓国だけの話ではなく、各国の宇宙開発競争で現在、宇宙空間には1億個以上の宇宙ごみが存在するといわれる。

目指せ「10大宇宙クラブ」

 ところで、韓国がかくも「宇宙」にこだわるのはなぜか。その一つの理由に、北朝鮮の動向がある。

 北朝鮮の朝鮮中央通信は12年12月12日、平安北道鉄山郡西海衛星発射場から、運搬ロケット「銀河3号」によって「光明星3号」の2号機衛星の打ち上げが成功したと報じた。銀河3号は単なるロケットではなく、国際社会は長距離弾道ミサイル「テポドン2」の派生型とみなしている。

 この一報に衝撃を受けたのが、ほかならぬ韓国だ。朝鮮戦争の敵国が長距離弾道ミサイルをぶっ放したのだから、当然だ。

 しかし、同日の中央日報は「屈辱の韓国政府」と題する記事の中で、「北朝鮮が先にロケット打ち上げに成功したことで、韓国は『10大ロケット開発国』という修飾を使用するのが難しくなった」と報じた。

 実は、韓国のマスコミ報道には「10大ロケット開発国」「10大宇宙クラブ」という単語が頻繁に登場する。「10大」というのは、人工衛星発射に成功した(1)旧ソ連(ロシアとウクライナに継承)(2)米国(3)フランス(4)日本(5)中国(6)英国(7)インド(8)イスラエル(9)イランに次いで、韓国もその仲間入りを果たそうという意気込みから出た言葉のようだ。

 そこに、敵国・北朝鮮が世界で10番目に衛星打ち上げに成功したというのだから、韓国社会のショックはいかばかりだったろう。先の中央日報は「もちろん北朝鮮のロケット発射が国際社会で公憤を買っているだけに、北朝鮮には『10大ロケット開発国』という地位が与えられないと予想される」としながらも、「韓国政府はプライドに大きな傷を負うことになった」と記事を締めくくっている。

 さて、韓国国家の威信をかけた宇宙戦略は今、大きな岐路に立たされている。

 今月に入り、韓国の来年度年度国家予算に「月探査事業」が反映されないことが固まり、「20年までに独自に開発した月探査船を韓国型ロケットによって打ち上げるとしていた探査計画が遅れる見通しとなった」(昨年12月4日、中央日報)と報じられたのだ。韓国国民の夢は、このまま幻に終わってしまうのか-。

 1969年7月20日、米国人宇宙飛行士、ニール・アームストロングが人類で初めて月に降り立ち、「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」との言葉を残した。

 それからおよそ半世紀。月面に降り立った人類は米国人以外にはいない。果たして、韓国人は“奇跡”を起こせるだろうか。

ランキング