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【地方変動】第1部・溶ける自治体(4)「限界集落」都市部に迫る

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 65歳以上の高齢者が半数を超え、共同体の維持が困難になりつつある「限界集落」。その名を聞けば、山間部や離島をイメージする人が多いだろう。しかし、実態はより深刻だ。都市部のそばにも迫りつつある。

 同じ5階建ての棟が無機質に連なり、バルコニーのところどころで塗装がはがれている。空室だろうか、カーテンもない部屋も目立つ。神戸市と兵庫県明石市にまたがる明石舞子団地。通称「明舞(めいまい)団地」は、高度成長期に全国で生まれたニュータウンの一つだ。

 前回の東京五輪が開かれた昭和39年に入居が始まり、最盛期には約3万7千人が暮らした。だが人口のピークは半世紀近く前の昭和50年。以降は減少に歯止めがかからず、平成27年には約2万人に落ち込んだ。

 団地で30年余り暮らす女性(82)は「昔は子供もたくさんいて、にぎやかだったけどね」と寂しげな表情を浮かべた。

 「子供が独立し、夫婦だけが団地に残っている」と兵庫県担当者は言う。独居や2人世帯が増え、高齢化が著しい。65歳以上は4割を超え、数字だけを見れば限界集落は目前といえる。

 自治体などが手がけ、各地で生まれたニュータウンは、かつてサラリーマンの希望だったが、時代の流れとともに「オールドタウン化」に拍車がかかっている。

 国内最大規模の東京・多摩ニュータウン。全体では人口が増えているものの、昭和40年代に入居がスタートした一部エリアでは、高齢化率が50%を突破した。

 名古屋市に近い愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンでも、平成17年に15%だった高齢化率が昨年10月に36%に上昇した。わずか15年で2倍以上になったことになる。

価値観変わった

 コロナ禍は「都心」「駅近」が人気だった「住」の価値観を変えた。自宅でのテレワークは職住融合という新しいライフスタイルを生み、仕事環境を整えやすい広い物件を求める郊外志向にシフトしている。郊外にあるニュータウンはこの風に乗れるのだろうか。

 多摩ニュータウンの駅前商業施設では今年1月、約100平方メートルのテレワーク用スペースが設けられた。「コロナを機に、郊外での働き方の変化に着目していた」と都市再生機構(UR都市機構)の担当者が話す。3月中旬までの実証実験だが、すでにリピーターも生まれている。新たな潮流は、ニュータウンの再生にどう寄与するか。UR都市機構は、地元の多摩市と成果を検証するという。

 高齢化が進む明舞団地でも、若い世代を呼び込むために団地の計画的な建て替えが進む。行政による子育て支援の拡充も手伝い、高齢化率が減少に転じたエリアも出ている。「変化に対応できる多様な選択肢を持つ必要がある」。明舞団地をフィールドに研究を続ける兵庫県立大の和田真理子准教授は言う。

消滅集落相次ぐ

 「地方消滅」というタイトルの書籍が衝撃を広げたことがあったが、それから数年がたち、全国各地で実際に消滅する集落が相次いでいるのが現実だ。総務省などの調査によると、一昨年4月までの4年間で139集落(対象の0・2%)が消滅。2744集落(同4・3%)がいずれ消える可能性があると指摘した。

 消滅危機にある集落が拡大する地方を起点に、衰退の波は都市部に近いニュータウンにまで達している。各地で再生の試みが進むとはいえ、時流の変化を捉え切れず世代交代に失敗すれば、ニュータウンの限界集落化は避けられない。

 都市形態の変化を研究する兵庫県立大の植野和文名誉教授はこう言う。「都市は周辺と相互に依存することで存続している。どちらかが弱くなれば双方ともに衰退してしまう」。ニュータウン再生の成否は、日本の成長を牽引(けんいん)する都市の消長も左右することになる。

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