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【政界徒然草】古賀氏に「つくしの坊や」と言われた岸田氏「ポスト安倍」戦略の行方は

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自民党本部で参院選の結果を見守る岸田文雄政調会長=7月21日、東京都千代田区(佐藤徳昭撮影)
自民党本部で参院選の結果を見守る岸田文雄政調会長=7月21日、東京都千代田区(佐藤徳昭撮影)
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 自民党の岸田文雄政調会長をめぐり、岸田派(宏池会、46人)で名誉会長を務める古賀誠元幹事長の発言が波紋を広げている。「ポスト安倍」に意欲を示す岸田氏が安倍晋三首相からの禅譲を目指していることについて、古賀氏は8月20日夜のBSフジ番組で「いくら禅譲といっても『つくしの坊や』じゃないが、ポキッと折れたら何もない」と指摘したのだ。岸田氏の後見人でもある古賀氏の厳しい言葉の背景には、何があるのか。

 「『ポスト安倍』であることは間違いないが、修羅場や政治センスという意味で一苦労、二苦労してもいい。余力のある年齢だ」

 古賀氏は番組で、岸田氏は必ずしも次期首相にこだわる必要はないとの認識を示した。岸田氏を突き放すような言い方をする一方で、菅義偉官房長官については「庶民に生まれてはい上がってきた人で(私と)同じ土のにおいがする。政権を担ってもらいたい」と持ち上げた。

 菅氏は、岸田派が古賀派だった時代の所属議員だった縁がある。古賀氏は4月8日にも、岸田氏について「ポスト安倍候補の一人ということは否定しないが、必ずしもポスト安倍でなければいけないということではない」と述べている。このときも、次期首相候補として菅氏の名前を挙げ、派内に波紋を呼んだ。

 昨年の総裁選で立候補を見送った岸田氏は、次期総裁選で首相からの禅譲を基本戦略に据えている。首相と岸田氏は平成5年の初当選同期。岸田氏の手堅い仕事ぶりに対する首相の信頼は厚く、岸田氏は安倍政権下で4年7カ月も外相を務めた。

 総裁選後も2人で定期的に会食するなど良好な関係を維持していることについて、首相に批判的な古賀氏は不満をもっているとされる。

 古賀氏は、政界引退後も地元・福岡をはじめ九州地方選出の若手国会議員らを中心に強い影響力を持っている。これらの若手議員は、総裁選で岸田氏に出馬を促す主戦論者が多かった。立候補を見送った岸田氏に物足りなさを感じている者も少なくない。

 古賀氏の言動は、党内で菅氏が「ポスト安倍」候補として急浮上していることも影響しているとみられる。菅氏は新しい元号「令和」の発表で脚光を浴び、最近は国民的人気が高い小泉進次郎厚生労働部会長との連携も目立っている。

 小泉氏は8月7日、首相官邸に菅氏を訪ね、滝川クリステルさんとの結婚を報告。同月10日発売の月刊誌「文芸春秋」では菅氏と小泉氏が対談し、菅氏は9月の内閣改造での小泉氏の初入閣について「私はいいと思います」と発言した。対談掲載のタイミングの良さに「菅氏は小泉氏の後見人となった」との見方もある。

 そんな菅氏と最近の岸田氏の立場はあまりにも対照的だ。

 象徴的だったのは7月の参院選だ。岸田派は他派に比べ突出して多い4人の現職が落選する憂き目にあった。特に痛かったのが岸田氏のおひざ元である広島選挙区(改選数2)で、6選を狙った派の重鎮、溝手顕正氏が落選したことだ。自民党は21年ぶりに広島で2人の候補を擁立したが、勝利したのは野党系現職と、菅氏が全面支援した新人だった。

 岸田氏の周辺では、総裁候補として求心力を高めるため、9月の党役員人事で党務を取り仕切る幹事長ポストを望む声が強い。しかし、党ベテランは「選挙に弱いイメージの岸田氏に幹事長が務まるのか」と疑問視する。

 こうした状況で飛び出した古賀氏の「つくしの坊や」発言。派内には「岸田氏への叱咤激励」とみる向きがあるが「あんまりだ。岸田氏は会長としてもっとはっきり意思表示をするべきだ」と反発する声も上がる。

 岸田氏が首相の座を勝ち取るには、首相との良好な関係を維持したうえで、首相が所属する党内最大勢力の細田派(清和政策研究会、97人)の協力が欠かせない。

 「首相からの禅譲を目指すならば、岸田氏は首相に批判的な古賀氏との関係を切る必要がある」

 ある細田派関係者はこう語る。

 党内のさまざまな声を見越して、岸田派では谷垣禎一前幹事長が特別顧問を務める谷垣グループ(有隣会)との合流を目指す動きも出てきている。同グループは岸田派と同じく宏池会の流れをくんでおり、グループ幹部も「同根で特に近しい関係にある」と親近感を持つ。首相と距離がある岸田派の一部が谷垣グループに入り、兼務しながら両勢力の距離を縮める方向で調整している。

 いまだ派内に強い影響力を持つ古賀氏との関係を重視するのか、異論があっても首相からの禅譲路線へ突き進むのか-。難しい選択を迫られるが、岸田氏は態度を明確にしていない。

 岸田氏は8月27日夜、東京・赤坂で、派内の若手グループが開いた会合に出席した。出席者に古賀氏の発言を問われると、岸田氏はきっぱりとこう答えたという。

 「回りの発言に左右されることはない。次は出るんだからな」

(政治部 長嶋雅子)

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