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【政界徒然草】相次ぐ北朝鮮のミサイル発射…抑制的な政府に自民党からは不満の声も

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8月11日付の北朝鮮の労働新聞に掲載された「新兵器」の試射の写真(コリアメディア提供・共同)
8月11日付の北朝鮮の労働新聞に掲載された「新兵器」の試射の写真(コリアメディア提供・共同)
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 北朝鮮が短距離弾道ミサイルを相次いで発射しているが、抑制的な対応を続ける政府に対し、自民党内で不満が渦巻いている。「わが国の安全保障にただちに影響を与えるような事態は確認されていない」と紋切り型のコメントを繰り返し、国家安全保障会議(NSC)の開催にも腰が重い。短距離型の発射を容認するトランプ米大統領に引きずられているとの見方があるが、党内では「本当に『問題ない』と説明できるのか」と疑問視する声が出ている。

6日間発射も、NSC開催は1回

 「政府や米国は表面上は静観の体(てい)だが、着々と(ミサイルの)性能実験を進め、完成度を高めていると判断せざるを得ない。このことは看過できない」

 16日に開かれた党の北朝鮮核実験・ミサイル問題対策本部の会合で、本部長を務める二階俊博幹事長は、政府の対応にこう疑問を呈した。

 北朝鮮は米韓の合同軍事演習に反発し、7月25日から8月16日まで断続的に6日間にわたり、短距離弾道ミサイルを数発ずつ発射した。しかし、この間、政府がNSCを開いたのは6日の1回しかない。二階氏が前日の政府与党連絡会議で、ミサイル発射が相次いでいるにもかかわらず政府の対応が鈍いことに懸念を示し、NSCを招集した面が否めない。

 これまでも、二階氏は政府の対応へ不満を募らせていた。7月25日からミサイル発射が続いても、政府が党側に状況報告をしたのは8月2日になってから。5日の記者会見では「党からいろいろ言われる前に、政府はしっかりと本分を自覚して対応すべきだ」と苦言を呈している。

 最近のミサイル発射に関する政府の反応は、過去の発射時と比べると抑制的だ。平成29年11月29日未明に大陸間弾道ミサイル(ICBM)が発射された際には、発射から約40分後の午前4時すぎに菅義偉官房長官が首相官邸で緊急の記者会見を開き、「北朝鮮による度重なる挑発行為を断じて容認することはできず、北朝鮮に対し厳重に抗議した」と強い口調で非難した。

 一方で、7月25日以降の6回の発射では、発射を受けた緊急の記者会見は開かれず、菅氏は同日の定例の記者会見でも北朝鮮への批判や抗議を控えた。

 ミサイルが日本の領域や排他的経済水域(EEZ)へ飛来しなかったとはいえ、政府は事後に、一連の発射を国連安保理決議違反となる「短距離弾道ミサイル」と断定している。一部は飛距離が約600キロに達したものもあり、日本の国土の一部にも到達可能な性能を持っていた。日本への脅威が高まったのは間違いない。

トランプ氏の姿勢も配慮?

 政府が抑制的な態度を取る一因として、米朝対話を維持したいトランプ氏がミサイル発射を容認していることが挙げられる。

 トランプ氏は9日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長から「美しい手紙」を8日に受け取ったとし、記者団に「核実験も実施されていないし、発射されたミサイルも長距離ではなく短距離だ」と問題視しない考えを改めて強調した。

 その後、トランプ氏はツイッターで「金氏が米韓合同軍事演習後に会談し(非核化)協議を始めたいと手紙で書いてきた」と手紙の詳細を明かした。短距離ミサイル発射に関しても少し謝った上で「演習が終われば発射実験をやめる」とも書いてあったという。

 一部には、政府がこうしたトランプ氏の姿勢に配慮し、抑制的な対応にとどめているという見方がある。政府高官は「米国に日本人拉致問題のことを言ってもらっている中での発射だ。『撃った、撃った』と騒ぐだけではいけない」と述べ、国際的な状況を冷静に見るべきだと語る。

 ただ、北朝鮮が7月25日と8月6日に発射したのは、5月に発射した新型短距離弾道ミサイル「KN23」と同じか改良型とみられている。ロシアの高性能弾道ミサイル・イスカンデルに酷似し、低高度を飛んで複雑な動きをみせ、ミサイル防衛を回避する設計とされる。

 韓国の軍事専門家は開発が最終段階にあるとみており、北朝鮮はトランプ氏の容認姿勢を奇貨として、ミサイルの性能と完成度を高めているとの見方もある。ある党幹部は「政府は国民の不安をあおらない程度に状況をきちんと説明すべきだ」と憤る。

 米韓合同軍事演習は20日で終了したが、北朝鮮が今後、本当に発射を止めて非核化に向けた動きを見せるのか。これまでの対応を鑑みると、楽観視はできない。拉致問題の解決にトランプ氏の協力は不可欠だが、一方で、政府には国連安保理決議違反を繰り返す北朝鮮に毅然と対応し、国民の不安を払拭することが求められる。

(政治部 大島悠亮)

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