PR

【政界徒然草】「改憲勢力」の違和感 2/3割れで憲法改正に近付いたのか

PR

その他の写真を見る(1/5枚)

 先の参院選で、報道各社は憲法改正に前向きな「改憲勢力」が国会発議要件を満たす3分の2以上を維持するかどうかに注目し、結果は3分の2に4議席足りなかった。これをもって憲法改正が遠のいたかのような論調もあるが、現実的に実現の可能性を「改憲勢力」という枠組みで考えるのは違和感がある。3分の2割れにより、かえって憲法改正に近づいたとみることもできるからだ。

 参院選は公示前から与党の過半数獲得がほぼ確実視されていたという事情もあり、報道では「3分の2」の成否に焦点が当たった。

 衆参両院の本会議で総議員の3分の2の賛成がなければ、憲法改正を発議(改正項目を国民に提案し、国民投票にかけること)はできない。ただ、改憲勢力と定義されている自民党、公明党、日本維新の会、一部の諸派・無所属議員をひとくくりにして改憲勢力と定義するのは、実態とかなりギャップがある。

 公明党は支持母体の創価学会に慎重論が根強い。山口那津男代表は維新以外の主要野党の賛同が必要だとの立場だ。立憲民主党や国民民主党が反対している限り、公明党も憲法改正に賛成したくないという意味にもなる。自民党の幹部で「公明党は改憲に前向きな勢力」と信じている人はいないのではないか。

 主要野党の賛同が必要という事情は自民党でも共通認識になっている。自民、公明、維新だけで発議に突き進んでも主要野党にこぞって「強引な安倍改憲」と批判され、世論の反感を招き、国民投票で否決される恐れがあるからだ。実際に衆参両院で3分の2を維持していた過去3年間、これらの勢力だけで発議しようとする動きは見せていない。

 自民党内で「3分の2割れ」への落胆の声はあまり聞かない。安倍晋三首相(自民党総裁)は参院選から一夜明けた7月22日、記者会見でこう述べた。

 「いわゆる改憲勢力とか、決まったわけではないですから。新たに登場した政党もあるし、国民民主党の中には憲法改正の議論をすべきだと考えている方がたくさんいる。国会議員が与野党の枠にとらわれることなく、幅広い議論をしていただきたい」

 維新の馬場伸幸幹事長も7月31日の記者会見で「どの政党でも改憲案が出てくれば真摯(しんし)に議論するが、野放しで賛成をすると言った覚えはない」と語り、「改憲勢力」とひとくくりにされることへの違和感を表明している。

×  ×  ×

 自民党内では、3分の2割れが改憲に向けてはプラスに働くとの見方がある。首相は参院選前から、「3分の2」の維持が困難との観測について、周囲に「かえっていい」と肯定的な見方を示していたという。

 なぜなら、衆参の憲法審査会の議論や政党間の協議を通じ「どうすれば3分の2以上の賛成を得られるか」を模索し、改正原案(どの項目をどう変えるかの条文案)を作成する努力が求められるからだ。党憲法改正推進本部の幹部は「マスコミに『3分の2』といわれれば、野党や公明党は警戒する。他党が『うちが乗らなければ憲法改正できない』と思ったほうが(他党が軟化し、議論や交渉が)やりやすくなる」と解説する。

 首相は「自衛隊の明記」に強い思い入れがあるが、公明や国民は批判的だ。一方、大災害発生時などの国会議員の任期延長や環境権の憲法への明記は、両党内で肯定的な意見があり、有力な改憲項目になり得るだろう。

 今後は、国民や無所属議員も加えた改憲勢力の再構築が課題となる。

 参院選後、参院の国民会派では維新との統一会派構想が浮上。一方、立民の枝野幸男代表は8月5日、国民、社民両党などに衆院での統一会派結成を打診した。臨時国会での議論の加速に向け、与野党の駆け引きはさらに活発化するだろう。

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が実施した8月3、4両日の合同世論調査では、各党が憲法改正に向け議論を活発化させるべきだと思うとの回答が6割を超えた。立民が改憲議論を拒み続ければ、国会で孤立するかもしれない。

(政治部 田中一世)

この記事を共有する

おすすめ情報