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【政界徒然草】ポスト安倍前哨戦 菅氏、岸田氏に先行も党内に不満

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自民党本部で参院選の結果を見守る岸田文雄政調会長=7月21日夜、東京都千代田区(佐藤徳昭撮影)
自民党本部で参院選の結果を見守る岸田文雄政調会長=7月21日夜、東京都千代田区(佐藤徳昭撮影)
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 先の参院選は自民党の勝利で幕を閉じたが、その裏では「ポスト安倍」をめぐる熾烈(しれつ)な争いが繰り広げられた。代理戦争の様相を呈した広島では、岸田文雄政調会長率いる岸田派(宏池会)の現職が落選する一方、菅義偉官房長官が支援した新人が初当選を果たした。菅氏は兵庫での公明候補の当選もおぜん立てし、今回の前哨戦は菅氏が岸田氏に先行したかにみえる。ただ、その強引な手法は党内に不満も生みつつある。

おひざ元で“敗北”

 8月1日夜、安倍晋三首相(自民党総裁)と岸田氏は東京・新橋の広島風お好み焼き店を訪れた。岸田氏が企画したもので、党の幹部職員らも同席。首相は一般客との写真撮影に応じ、上機嫌だったという。

 2日前の7月30日には岸田氏が官邸を訪れ、首相と40分ほど面会した。2人は平成5年の当選同期。首相は岸田氏を後継候補の1人と期待してきた経緯があり、参院選後もその関係に揺らぎはないかに見える。

 もっとも岸田派内には、次の党役員人事で岸田氏の幹事長就任を期待する向きもあっただけに、ベテラン議員は「あれだけ参院選で負ければ無理だろう」とため息を漏らす。

 参院選で岸田派は現職4人が落選した。岸田氏にとって特に痛かったのは、自身と派閥のおひざ元といえる広島選挙区(改選数2)での派幹部の落選だ。

 自民は広島で21年ぶりに2人の候補を擁立した。地元県連は最後まで反対したが、首相官邸の意向もあり、党本部は岸田派の現職に加え、新人の元県議に公認を出した。選挙戦は、県議の大半や岸田派の国会議員が推す現職と、新人が票を奪い合う構図となった。

 菅氏は新人の夫である河井克行・党総裁外交特別補佐と親しく、新人を全面的にバックアップした。公示前から応援演説に訪れたほか、公示後の7月15、16日には公務の合間を縫って2日連続で広島入りする力の入れようだった。さらに、良好な関係を築く公明党とその支持母体の創価学会にも協力を要請した。

 対する岸田氏は、派閥会長として現職の支援を優先した。公示後に世論調査で劣勢が伝えられると、東京事務所の秘書を地元に張り付かせ、終盤には党幹部として各地の自民候補らの応援をこなしながらも、地元に戻って支援を呼びかけた。

 しかし、最終的に新人が当選し、現職は約2万5千票差で落選する結果となった。現職陣営の関係者は敗因として、首相の秘書や選挙に精通する党職員OBが広島入りして自民支持層を新人に取り込み、公明票も新人に流れたことを挙げる。

 一方、現地に応援に入った岸田派議員は「岸田会長は優しすぎる。地元任せにせず、前面に立って指揮すべきだった」と漏らす。選挙戦では、岸田派の現職や県連幹部が新人や党本部に対する批判を繰り返し、自民支持層や無党派層が離れたとの見方があるためだ。

兵庫で番狂わせ

 菅氏の影響力があらためて注目されたのが兵庫選挙区(同3)だ。28年参院選で議席を得た公明党は今回も新人を擁立したが、日本維新の会が4月の大阪府知事・市長のダブル選などで勢いにのる中、苦戦が予想されていた。

 そこで頼ったのが菅氏だった。菅氏は公示前から自ら兵庫入りし、応援を行った。結果的に公明新人は自民新人を上回り、2位当選を果たした。

 ただ、7月21日の投開票日には一時、自民新人が落選するのではないかとの見方も広がり、自民陣営の関係者からは「菅長官が自民の支持組織にも公明への投票を呼びかけたせいだ」と恨み節が聞かれた。自民新人は約3万票差で立憲民主党新人を抑えて3位当選したが、自民内には「いくら公明と連立を組んでいるとはいえ、自民が議席を失う事態になっていれば菅氏の責任問題だった」(ベテラン)との声も漏れる。

 参院選後には、初当選組3人が二階俊博幹事長率いる二階派(志帥会)に加入した。広島選挙区で当選した新人は、菅氏が二階派入りを薦めたとされ、党内からは「総裁選に立候補したときに二階派の支援を受けるためではないか」と警戒する声があがる。

 菅氏自身は次期首相への意欲を明らかにしていないが、候補の1人であることは衆目の一致するところだろう。

 選挙期間中、菅氏が演説を行う会場には「令和」と書いたプラカードを持った若者らも詰めかけた。また、好物であるスイーツを食べる姿はSNSなどで頻繁に発信された。総裁選では党員票(地方票)の動向がカギになるが、菅氏としては、新元号発表を機に高まった全国的な知名度を党員や支持層に示したといえる。

 もっとも、菅氏が応援に入った複数の激戦区でも生まれ故郷の秋田選挙区(同1)をはじめ、自民候補が落選した。9月に予定される党役員人事や内閣改造で岸田氏と菅氏の2人がどう処遇されるのか、今後のポスト安倍レースを見極めるうえでも重要になりそうだ。

(政治部 田村龍彦)

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