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【政界徒然草】破裂音、横断幕、怒号…7月20日の“聖地”アキバで何が起きたか

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安倍晋三首相の街頭演説で、聴衆の中に現れた黒い巨大な風船。ひもの先には「安倍ヤメロ」などと書かれた横断幕が付けられていた=7月20日、東京・秋葉原(今仲信博撮影)
安倍晋三首相の街頭演説で、聴衆の中に現れた黒い巨大な風船。ひもの先には「安倍ヤメロ」などと書かれた横断幕が付けられていた=7月20日、東京・秋葉原(今仲信博撮影)
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 自民党は先の参院選で、安倍晋三首相(党総裁)の遊説日程を公表しなかった。首相の演説を妨害するグループへの対策だが、首相が投開票前日の7月20日、最終演説を行った東京・秋葉原には、首相を批判する勢力が大勢集まった。破裂音を響かせる巨大風船と横断幕を掲げて騒ぐ姿は、明らかに演説の妨害を狙っているとしか見えなかった。それを阻止しようとする自民支持者らの間で一悶着(もんちゃく)も起きた。首相が国政選挙のたびに最終演説を行う“聖地”で何が起きたのか。

巨大風船を持つ黒Tシャツ集団

 同日午後6時半から行われた首相の街頭演説には、開始前から多くの聴衆が集まった。「がんばれ自民党」などと書かれたプラカードを掲げる支持者が多かったが、政権に批判的なメッセージを記したプラカードを手にする人も目立った。

 党都連所属の国会議員らの演説が続く中、聴衆の中で浮かぶ複数の巨大な風船が目に飛び込んできた。近づいてみると、風船を持っていたのは黒いTシャツ姿の男性の集団。風船の先には布のようなものが取り付けられていたが、何が書かれているかはよく見えなかった。

 首相はまだ到着していなかったが、その異様な光景に気づいた党関係者らも集まりだした。すると、別の場所にいた一人の男性が集団に近づき、ささやいた。

 「やっちゃえってさ」

 その言葉を合図に、集団が風船についていた布を広げると「安倍ヤメロ」と大書された横断幕が浮かび上がり、一部の聴衆が「安倍辞めろ! 安倍辞めろ!」と騒ぎ出した。

 横断幕を下げさせようとする支持者らと集団がもみくちゃとなり、会場には罵声や怒号が飛び交った。警察官が止めに入ると、「暴力反対」コールも起きた。「表現の自由を守れ!」と叫ぶ男性もいる中、いくつかの巨大な風船は空に舞い上がり「パーン!」という大きな破裂音が響き渡った。

 今回の参院選では、自民候補の街頭演説に集まった聴衆の態度をめぐり、トラブルが相次いだ。7月7日には東京・JR中野駅前で、騒ぐ集団を撮影しようとした女性からスマートフォンを奪い、地面にたたきつけて壊したとして、40代の女が警視庁中野署に器物損壊容疑で現行犯逮捕された。

 同15日に札幌市で行われた首相の街頭演説では、やじを飛ばした聴衆を北海道警の警察官が取り押さえ、現場から排除した。道警の行動をめぐり、インターネット上で「やり過ぎだ」と非難もあがったが、公職選挙法225条では、演説妨害を「選挙の自由妨害」と位置付け、刑事罰の対象としている。

 個人のヤジが該当する可能性は低いだろうが、集団で演説が聞き取れないほどの妨害行為を行った場合は同法が適用される可能性がある。違反行為をした場合は、4年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金を定めている。

「演説聞く権利の妨害」

 20日夕の秋葉原では、首相は騒動が起きた数分後に会場にあらわれた。首相は盟友の麻生太郎副総理兼財務相が演説した後にマイクを持ったが、話し始めても一部からの「安倍辞めろ」コールは続いた。

 これに対し、首相の支持者らは「安倍がんばれ」などと声を挙げ、政権に批判的なプラカードを遮るように「日本を守れるのは自民党だけ」などと書かれた支持者側のプラカードや幟旗を立てた。「演説が聞きたい」と書かれた横断幕を掲げる人も現れたが、首相の演説が終わるまでヤジが収まることはなかった。

 集団の近くにいた男性会社員は「演説を聴く権利の妨害だ。ここで起きていることをきちんと報道してほしい」と嘆いた。

 ヤジる聴衆を排除することは、憲法で保障された「表現の自由」への不当な侵害との意見もある。

 ただ、中野駅前でスマートフォンを壊される被害に遭った女性は、産経新聞の取材に「妨害するぐらいなら、彼らが支持する政党を応援してあげた方がいい」と憤った。「(自民候補者の)名前が出たら『死ね』ともいっていた。選挙の応援演説や妨害自体が差別であり、ヘイトではないか」とも指摘した。

 そもそも選挙演説の妨害は法に触れる行為だ。秋葉原で大騒ぎした集団は、「表現の自由」の名に値するのだろうか。

(政治部 今仲信博)

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