PR

茨城選挙区、骨太さ欠く「無風」の論戦

PR

 与党と最大野党が議席を分け合ってきた参院選茨城選挙区の「指定席」の構図は、旧民進党の分裂後初めて行われた今回の改選でも揺るがなかった。

 「(初当選した)前回より1票でも多く取るという気持ちで臨んだ」

 自民党現職の上月良祐氏は21日夜、当選が確実になったことを受け、選挙戦をこう振り返った。立憲民主党新人の小沼巧氏は「県民の皆さまに鍛えていただいた」と語った。

 ただ、「1票でも多く取る」「鍛えられた」と胸を張るほどの骨太の論戦が与野党間で交わされたとは思えない。

 上月氏は、主要野党に対して「反対ばかり」「他の党の批判だけしかしない」と矛先を向け、自公政権による安定した政治の継続を訴えた。

 その批判は一面の真実を突いていたにしても、上月氏自身が何を目指しているかの説明は曖昧なままだった。「現場第一」「つながり」「情熱」…。具体性に欠ける街頭演説は改選複数区ゆえの緊張感のなさの象徴に映った。選挙戦を振り返って記者団に語った「初めてひとり暮らしをしたときのような気持ち」という言葉も、弛緩(しかん)した印象を際立たせた。

 そもそも、候補者を上月氏1人に絞った党県連の判断自体、党勢拡大に向けた「本気度」に疑問符がつく。保守王国と呼ばれる土地柄で、なおかつ野党候補の人選が出遅れていた今回の改選は、2議席独占の好機だったはずだ。

 対する小沼氏は「リアリティーのある原発ゼロ」を主張の軸に据えた。原発をなくすことを訴えるだけでなく、その後の雇用の問題にも触れて「エネルギー企業の新しい飯の種を作る」と強調した。

 ただし、その「飯の種」の中身について具体性と説得力を伴う説明を展開したとは言いがたい。

 小沼氏が原発関連産業の雇用の問題に言及したのは、参院選で支持を受けた連合茨城への配慮にほかならない。電力系労組を擁する連合の内部には「原発ゼロ」の訴えに拒否感を抱く向きもある。

 もともと日本原子力発電東海第2原発(東海村)の再稼働反対を強く打ち出していたはずの小沼氏だが、選挙公報には「東海第2原発」の文字はなく、腰の引けた姿勢を印象づけた。

 多様な民意を反映させるために政策に「幅」を持たせることを否定はしない。とはいえ、主要政策に関する見解の不一致を言葉で糊塗(こと)する姿は旧民主党・民進党が歩んだ「いつか来た道」と重なる。

 与党候補と野党統一候補がつばぜり合いを繰り広げた改選1人区や、激戦となった他の2人区に比べると、茨城選挙区は全国屈指の「無風区」だった。与野党幹部がてこ入れに乗り込んでくる回数も少なく、低調なムードに比例するように候補者同士の論戦も迫力を欠いた。

 今回の選挙戦を、少なからぬ県民がしらけた思いでながめていたことは想像に難くない。当選した上月、小沼両氏は、おおむね2人に1人が棄権したことの意味をかみしめてほしい。(水戸支局次長 松本学)

この記事を共有する

おすすめ情報