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自衛隊、離島で電子戦訓練できず 携帯電話と混信恐れ、総務省が認めず

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 自衛隊が電磁波を使う電子戦の訓練をめぐり、沖縄県の離島への中国の侵攻を想定した電波妨害訓練を行えず、支障が生じていることが26日、分かった。訓練で活用する電波の周波数について総務省の承認を得られない状態が続いているためだ。携帯電話の通信の送受信に使う電波と混信する可能性があるのが理由で、国防と民需で電波の争奪戦が激しくなっている。(半沢尚久)

 陸上自衛隊は26日、沖縄県・宮古島と鹿児島県・奄美大島に新たな駐屯地を開設した。ただ、実戦に則した訓練が行えなければ電子戦で自衛隊の情報通信ネットワークやレーダーが妨害され、駐屯地の部隊が機能しなくなる恐れがある。

 南西防衛強化に向け自衛隊は5年ほど前から沖縄の宮古・石垣両島で電波妨害訓練を計画。陸自は車載型の妨害装備を保有し、島に上陸した敵の情報通信やレーダーと同じ周波数の電波をぶつける「干渉」により無力化する訓練を想定。電波は周波数や山などの地形で伝わり方が異なり、「現地での訓練が不可欠だ」(自衛隊幹部)という。

 訓練ができないのは訓練計画地の近くに携帯電話基地局があるからだ。基地局はスマートフォンなどの端末と電話網の間の通信の中継拠点で、携帯事業者は半径1キロ程度ごとに基地局を設置。現行通信規格の第4世代(4G)では電波周波数は極超短波(UHF)の2ギガ(ギガは10億)ヘルツや800メガ(メガは100万)ヘルツの周辺が使われている。

 自衛隊が訓練で使おうとしているのもこれらの周波数で、電波法を所管する総務省は基地局の近くで同じ周波数を使った訓練を行えば、「混信を起こし、周辺で携帯電話が使えなくなる可能性がある」(電波部)として宮古・石垣両島での妨害訓練を承認していないと説明する。

 中国とロシアが電子戦を重視していることを受け、自衛隊は電子戦能力を強化する方針。一方、今秋から本格運用が始まる通信規格の第5世代(5G)では周波数は大容量のデータを送ることができるマイクロ波(SHF)に移るが、軍事用レーダーはSHFの周波数を使うものも多く、訓練への障害は依然残る。

 むしろ5Gでは通信活用が自動運転や遠隔医療に広がることで電波利用と基地局も増え、訓練への制約は厳しくなりかねない。打開策としては不発弾処理のように一定の時間、限定的な区域への立ち入りを規制した上で訓練を行うことなどが想定され、「政府全体で検討すべきだ」(政府高官)と指摘される。

【用語解説】電子戦

 電波や赤外線といった電磁波を利用するレーダーなどのセンサー、情報通信で相手の電磁波利用を妨げ、自国の電磁波利用を防護する。電子戦の能力強化は昨年末に改定した「防衛計画の大綱」で宇宙・サイバーと並ぶ新たな領域の柱に据えられた。

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