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「北方領土」で露大使に再反論 本紙・斎藤論説顧問「降伏後の占領は国家犯罪」

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北海道・根室半島の納沙布岬(左下)沖に広がる北方領土。歯舞群島(中央)、色丹島(右上)、国後島(左奥)。はるか右奥にうっすらと択捉島が見える
北海道・根室半島の納沙布岬(左下)沖に広がる北方領土。歯舞群島(中央)、色丹島(右上)、国後島(左奥)。はるか右奥にうっすらと択捉島が見える

 ロシアのガルージン駐日大使は7日までに、産経新聞の斎藤勉論説顧問が北方領土問題に関して行った講演内容に対し、SNS(会員制交流サイト)を使って反論した。斎藤氏は講演で、日本のポツダム宣言受諾後にソ連が北方四島を強奪した経緯を語った。大使は反論で「1945年に対日参戦したソ連を非難するのか。完全に合法的に行われた南クリール獲得を『犯罪』と呼ぶのか」などと指摘した。これに対し、本紙は斎藤氏の再反論を掲載する。

≪斎藤顧問の講演要旨≫

 プーチン政権はクリミア半島を奪い、グルジア(現ジョージア)に侵攻するなど国際法違反をしている。民主国家だと言うが体質はソ連時代から変わっていない。北方領土については紛争ではなく、独裁者スターリンの指令による国家犯罪だ。日本のポツダム宣言受諾後、四島に入り込み、火事場泥棒的に強奪した。

≪ガルージン大使の反論≫

 1月25日付産経新聞に掲載された斎藤勉論説委員(実際は論説顧問=本社注)によるロシアに関する不快な記事に対して、断固として反論する。

 あなたは1945年に対日参戦したソ連を非難するのか。完全に合法的に行われた南クリール獲得を「犯罪」と呼ぶのか。あなたには歴史の教科書を開き、注意深く最後まで読むことをすすめたい。

 そうすれば、第二次世界大戦時に日本がナチスドイツの同盟国であったことを思い出していただけるだろう。そう、日本は最も罪深い犯罪者であるヒトラー政権と同盟していたのだ。

 このヒトラー政権によって、ユダヤ人ホロコーストは行われ、何百万というロシア人、ベラルーシ人、ウクライナ人、ポーランド人、フランス人、その他多くのヨーロッパの国民が命を奪われ、「死の工場」と呼ばれた強制収容所が作られ、ロシアを含むヨーロッパの何千という街が破壊されたのである。

 人間性を犯すこうした罪により、ナチス幹部はニュルンベルク裁判の判決により罰せられた。

 斎藤さん、あなたはこのことを忘れてしまったのだろうか。戦争当時、日本の指導部が誰を支持していたのか、知らないとでも言うのだろうか。しかし我々はすべて覚えているし、知ってもいる。そしてあなたのような人にとっても、当時の日本の行いについて悔い改めるにはまだ遅くはないと考えているのである。(2月1日付のフェイスブックから全文=原文通り)

≪斎藤顧問の再反論≫

 1月24日の「九州正論懇話会」での私の発言について、ロシアのガルージン駐日大使から同大使館のフェイスブックとツイッターで、名指しの「反論」を頂戴した。ロシア外務省の「ジャパン・スクールの俊英」と誉れ高い大使閣下の反論だが、失礼ながらまともな反論とは言い難い。

 北方領土(ロシアでは南クリールと呼称)「獲得」について、冒頭から「完全に合法的に行われた」と聞き覚えのない表現。何かその目新しい証拠でも出てきたのか、と思ったが、それはなし。「獲得」を国家「犯罪」と断じられたことがご不快らしい。

 私はとうの昔から北方領土奪取と、これとセットで断行されたシベリア抑留、北朝鮮による拉致事件を戦後未解決の「国家犯罪」と主張してきたので、いまさら大使の「反論」とは不徳の致すところだ。

 スターリンの直接指令でソ連軍は1945年8月、日ソ中立条約を一方的に破って対日参戦し、日本が降伏後に丸腰の四島に侵攻して占領した。これが「犯罪」でなくて何なのか。国家犯罪はおろか「領土不拡大」を明記した「大西洋憲章」に違反する「国際犯罪」でもある。

 大使は日本がユダヤ人ホロコースト(大虐殺)を行ったナチスドイツと同盟国だったことを私への反論の唯一の材料として持ち出しておられる。この関連付けが全く理解しかねる。

 ヒトラーは「最も罪深い犯罪者」だが、スターリンは違うと言いたいのか。「同盟国」ゆえに日本もナチスと同じ犯罪者だというのか。逆にお聞きしたい。日本はいつ、どこで、いかなる「ホロコースト」をしたというのか。

 大使ご指摘の「死の工場」といえば、シベリア抑留の残虐非道はどう説明されるのか。戦後、日本の支配地域から「ダモイ(帰国する)」とだまされて60万人もの日本人が酷寒の地へ拉致され、奴隷労働同然に酷使されて6万人(数字はいずれも未確定)もが無念の死を遂げた。実は私の亡き父親も辛酸を嘗(な)めた抑留者である。

 第二次大戦中、ロシア西部でポーランド将校ら2万人余が虐殺される「カチンの森事件」が起きた。スターリンは一貫して「ナチスドイツの仕業」と世界に大ウソをつき続けたが、ポーランド政府の粘り強い真相解明の国際的訴えかけでゴルバチョフ時代、ついに「スターリンの犯罪」と認めさせた。

 ガルージン閣下にもぜひ、幅広く世界の歴史教科書をお読みいただくことをおすすめしたい。

【プロフィル】斎藤勉

 さいとう・つとむ 昭和24年生まれ。47年、東京外語大ロシア科卒、産経新聞入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、東京編集局長、取締役副社長大阪代表などを歴任。昨年から論説顧問。「ソ連、共産党独裁を放棄へ」のスクープで日本新聞協会賞受賞。著書に『スターリン秘録』(産経新聞出版)など。

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