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【安倍政権考】地方法人課税、偏在是正へ見直し…東京包囲網着々 小池氏vs官邸第2幕も敗色濃厚

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地方法人課税の偏在是正に強い意欲を示す菅義偉官房長官=7日、首相官邸(春名中撮影)
地方法人課税の偏在是正に強い意欲を示す菅義偉官房長官=7日、首相官邸(春名中撮影)
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 平成31年度税制改正の焦点となる地方法人課税の見直しをめぐり、政府と東京都のつばぜり合いが激しくなっている。政府が都に集中する税収の偏在をなくし、地方の配分を増やそうとしているのに対し、大幅減収が見込まれる都が反発しているためだ。もっとも、都以外の自治体は政府に歩調を合わせており、包囲網は狭まりつつある。

 「国の『一極集中の是正』という掛け声のもとに、東京や大阪府などの税収が狙い撃ちにされている」

 「都税の一部を地方に再分配する制度の強化が実現すれば、何が起こるか。首都のさまざまな計画に支障が出るのは明らかだ」

 小池百合子知事(66)は8月12日付の本紙朝刊1面「女子の兵法」で、政府が進める地方法人課税の見直しにこう危機感を示した。

 昨年12月に決まった30年度与党税制改正大綱は、地方法人課税の偏在を是正する新たな措置について31年度改正で結論を得るとした。総務省によると、法人税収は最も多い東京都と最も少ない奈良県で6・1倍の差がある。多くの企業が本社を置く東京に景気回復の恩恵が集中しているためだ。全国でビジネスを展開するが、地方に事業所などを持たないIT・サービス企業が増えていることもそうした傾向を後押しする。

 政府は地方創生を掲げており、東京に集中する税収を地方に回すことが欠かせない。だが、都としては容易に受け入れられない。

 30年度税制改正では、都道府県に割り当てる地方消費税の配分方法が見直され、都の税収は約1千億円減ることになった。昨秋の衆院選以降、小池氏は政府に押し込まれる局面が目立つ。そこで6月に立ち上げたのが有識者会議「東京と日本の成長を考える検討会」だ。委員にジャーナリストの田原総一朗氏や経済財政諮問会議議員も務める新浪(にいなみ)剛史サントリーホールディングス社長らをそろえた。発信力を強める狙いとみられる。

 これに対し、政府関係者は「見直しに影響しない」と冷ややかだ。都は防災対策や高齢化対応などの予算が必要と主張しているが、総務省は「税収の少ない地方自治体は人件費を減らしたりして費用を捻出している」とくぎを刺す。

 偏在是正に強い思い入れを持つのが菅義偉(すが・よしひで)官房長官(69)だ。

 「築地市場の豊洲移転にかかっている費用は秋田県の予算(約5800億円)と同じ。作ったにも関わらず、そのままにしている。財政に余裕がありすぎるからこういうことが起きる」

 菅氏は7月、故郷の秋田県で行った講演でこう語り、会場を沸かせた。

 菅氏は総務相時代、法人事業税の一部を地方法人特別税として国が集め、都道府県に譲与する制度の創設に尽力した。地方法人特別税は消費税率を引き上げる31年10月に廃止予定で、今回の見直しで、より効果的な仕組みを導入したい考えだ。

 今のところ都に援軍は見当たらない。全国知事会は7月の提言で、地方法人課税について「新たな偏在是正措置を講じることにより、偏在性が小さい地方税体系を構築すべきだ」と指摘した。提言には都の要請で大都市の行財政需要や活力維持などに配慮するとの文言も入れたが、おおむね政府と歩調を合わせた形となった。

 都の基金残高は毎年3千億~5千億円のペースで増加しているが、地方財政全体では財源不足が生じている。都以外のほとんどの自治体にとって偏在是正は税収増につながる。

 総務省は9月11日、ふるさと納税で高額な返礼品ができないようにする抜本的な見直しを表明した。ふるさと納税については、都や23区など都市部の自治体に税収が流出しているとの不満が根強かった。このため「単に都を狙い撃ちして税源を取り上げようとしているのではなく、より公平な税体系を作ろうとアピールしている」(政府関係者)との見方がある。

 いずれにしろ、外堀は徐々に埋まっている。 (政治部 田村龍彦)

 地方法人課税 地方自治体の税収となる地方法人課税は、法人住民税と法人事業税に区分される。法人住民税は都道府県や市町村が事務所などを置く企業に課税する。一部は地方交付税交付金の原資(地方法人税)として国に徴収され、税収の少ない自治体に再分配される。一方、法人事業税は都道府県が課税する。一部が地方法人特別税として分離され、人口と従業者数をもとに都道府県に譲与される。

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