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なぜ前川喜平前文科次官は「出会い系バーで貧困調査」という苦しい釈明をしたのか

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なぜ前川喜平前文科次官は「出会い系バーで貧困調査」という苦しい釈明をしたのか

ITmedia News 更新

 にもかかわらず、無理筋の釈明をしてしまったというのは、やはり官僚トップの「面子」があったとしか考えれないのだ。

 それを踏まえると、今回の「行政がゆがめられた」という「告発」も同じような背景があるように見えてしまう。つまり、政権の不正を正すためというよりも、単にご自分の「面子」を守るためにやっているように思えてしまう。

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 それがいったいどういう「面子」なのかということを分かっていただくには、そもそも「獣医学部新設」というものが文科省と、前川さんにとってどのようなものかということを説明しなくてはいけない。

 前川さんもおっしゃっているが、文科省は文部省時代から長く獣医学部の新設に難色を示してきた。昭和51年(1976年)の「獣医師問題検討会報告」(農林水産省)などの需給予測をもとにして、昭和54年(1979年)以降、獣医学部の定員抑制方針というのを一貫として続けているのだ。

 この背景には、民進党の玉木雄一郎幹事長代理にも働きかけていた日本獣医師会からの猛烈なロビイングがあることは言うまでもない。

 ハタからみると、どうしても参入障壁を上げて既得権益を守っているような印象しか受けないが、獣医学部をつくって獣医が多くなりすぎると、しょうもないことをする輩(やから)も出てきて、「質」が落ちるというのが獣医師会のロジックである。このあたりはやはり「国家戦略特区」によって38年ぶりの医学部新設を押し切られた、日本医師会の主張とよく似ている。

 ちなみに、獣医師会が本気で「数より質」にこだわっているのは、1984年4月1日の朝日新聞を読むと嘘ではないことが分かる。獣医師会が個人会員に対して10年以上、厳しい広告規制をかけていたことを認め、公正取引委員会が問題視していたというのだ。

前川さんが「正義の告発者」になるまでの背景

 このように、とにかく獣医師を増やしたくない獣医師会が「獣医学部新設」の重しとしてすがっていたのが、自民党の「文教族」である。

 「獣医師問題議員連盟」にはこれまで森喜朗、麻生太郎、高村正彦、鳩山邦夫という文教族が文教族がズラリと名を連ねており、そこには前川さんの義理の弟で、森内閣で文部大臣を務めた中曽根弘文参議院議員も含まれている。

 ちなみに、中曽根さんの政治団体の収支報告書(平成23年分)を見ると、前川さんの実兄で、前川製作所の前社長を務めた前川昭一さんとご親族が、政治資金パーティーに計200万円を支払っている。前川さんと中曽根さんが文科官僚と政治家という立場を超え、「ファミリー」として強い結びつきがあることがうかがえよう。

 こういう事実関係をひも解いていけば、前川さんにとって「獣医学部新設」がどのような意味をもつかが見えてくる。獣医師会という業界もノー、文部省時代から諸先輩たちもノー、そして義弟もいる自民党文教族もノーということで、「文教ムラ」に生きる者として絶対に認めてはならぬタブーなのだ。本来なら、前川さんは歴代の事務次官のようにこの動きを未然に潰さなくてはいけないのだが、官邸が岩盤規制に穴を開けるためにつくった「国家戦略特区」の前になす術もなかった。つまり、官僚トップとしての「面子」が丸つぶれになった形なのだ。