学生アスリートの学び、大学入学前から支援する教材開発 

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 学生アスリートが学業と競技生活を両立できるようにと、全国の220大学が加盟する大学スポーツの統括組織「一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)」と河合塾グループで大学生や社会人向けの教育を手掛ける企業「KEIアドバンス」が、大学入学前から学業の準備を始める新しいプログラムを開発した。大学入学前の学生アスリートに特化した教材は珍しく、アスリートの第二の人生にもつながる取り組みとしても期待が広がっている。(加納裕子)

 「大学に入るまでに苦手分野をつぶしておきたい。オンラインで隙間時間に学習できるところがいいですね」。今年4月、仙台大体育学部に入学予定の佐々木郁哉(ふみや)さん(18)は笑顔を見せた。5歳から体操競技を続け、昨年は18歳以下の日本代表に。同大付属明成(めいせい)高校から学校推薦型入試をへて同大に合格し、大学入学後も体操競技を続け、さらに上を目指す。

 一方、その先には体操競技の指導者になるという夢もある。その資格を取るためにもスポーツと学業の両立は不可欠だ。今年1月から「入学前教育プログラム」の教材で学習を続けており、当初は解けなかった問題も解けるようになるなど効果を実感しているという。

 教材はKEIアドバンスが開発し、大学スポーツ協会が監修。運動部に在籍する学生が学業にも力を入れるべき理由や、大学での学業のポイントを記した「学びのハンドブック」を基本に、新聞記事を読んでリポートを書く教材やスポーツに役立つ数学教材、オンラインで学べる英語教材をそろえた。

 今年度から本格的に提供を開始し、全国11大学に入学予定の約660人が使っている。仙台大では明成高校から進学する高校生26人が教材を利用して学ぶ。

デュアルキャリア

 仙台大スポーツ局で部活動を統括するスポーツ・アドミニストレーター、大友健夫(たてお)さん(32)は「大学での勉強は将来必ず生きてくる。入学前に競技以外の人生も考えて学習の基礎を固めることは非常に重要だ」と期待する。

 背景には、アスリートが競技引退後も充実した人生を送るためには、競技活動と学業・仕事を両立させる「デュアルキャリア」が必要との考えがある。この考えは平成24年、国のスポーツ基本計画に初めて盛り込まれ、29年には産官学でアスリートのキャリアを支援する「スポーツキャリアサポートコンソーシアム」が発足。31年3月に創設された大学スポーツ協会もデュアルキャリアを推進する。

 大友さん自身、学生アスリートとしてプロサッカー選手を目指していた。プロになる夢はかなわず、一般企業に就職した後、現職に。自身の経験から「デュアルキャリアの考えをもって大学時代を過ごすかどうかで、5年後、10年後が違うものになる」といい、後輩にエールを送る。

社会に出る準備も 

 KEIアドバンスによると、学生アスリートの学びを支援する重要性は認識されていたが、そこに特化して寄り添った教育はほとんどなかったという。

 大学スポーツ協会の池田敦司専務理事(64)は「学生アスリートにはスポーツ活動に邁進(まいしん)するとともに学業にも力を入れ、社会に出るためのキャリアの準備をしてほしい」と強調。その上で、「受け身の高校までの学習とは違い、大学では能動的な学びが求められる。大学に入ってから急に変えることは難しく、準備期間が大事だ」と話している。

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