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ワクチン新システムに不具合頻発 データ入力、自治体に負担

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 新型コロナウイルスのワクチンの接種状況を一元的に把握するため、国が導入した新システムに自治体や医療機関から不満の声が上がっている。接種券を読み取るタブレットの不具合に加え、システムへの入力作業などが重荷になっているからだ。高齢者に続き、一般の人の接種が本格化するにつれ、接種状況の迅速な把握が難しくなったり、誤った情報が入力されたりするケースも想定され、混乱が加速する恐れがある。(鬼丸明士)

 新たに導入された「ワクチン接種記録システム(VRS)」は、自治体側があらかじめ整備している予防接種台帳や住民基本台帳から住民の氏名や生年月日、接種券の番号、マイナンバーといった情報を入力。国から配布されたタブレットを使って接種会場の担当者が接種券に記載された18桁の数字列を読み取り、接種記録を蓄積する仕組みだ。

 これまでの予防接種では住民の情報が予防接種台帳に反映されるまで2~3カ月かかることもあったが、このシステムは瞬時に接種記録を把握することが可能で、市区町村間での共有などのメリットがある。

 国は4月から高齢者接種が始まるのに合わせ、計約4万台のタブレットを市区町村に配布。だが、現場ではタブレットが18桁の数字列を読み込まなかったり、フリーズしたりする不具合が頻発しているという。

 「手持ちだと、手振れでタブレットが数字を全く読み取らない」と東海地方の自治体担当者。数字の部分に汚れなどが付いていた場合は全く違う番号を識別し、最悪の場合、接種を受けた住民ではない人物の接種記録が蓄積されることもあるという。

 こうした不具合については、システムを管轄する内閣官房も把握。自治体向けのレクチャー動画などを配信しているほか、タブレットの読み取り用スタンドを各自治体に配布することを決めた。

 ただ、それだけでは問題は解決しない。東京都のある自治体の担当者は「システムの活用は現場にとって負担でしかない」と打ち明ける。システムへの入力チェックはすべて自治体任せとなっているからだ。

 リアルタイムで入力せずに、後でまとめて作業をするケースも出ており、入力を行わない自治体や医療機関が出てきた場合は、実際の接種状況と政府の発表する接種状況が合わない事態も想定される。

 ある自治体の担当者によると、医療機関側が、新しいシステムへの理解や入力への手間を嫌がり、ワクチンの打ち手を確保することが難航したことがあった。また、先行してワクチン接種が行われた医療従事者の記録がシステムに登録されていないケースもあり、今後、一般の接種が本格化した際、同様の事態が起こることは容易に考えられる。自治体関係者は、「システムに登録されるデータが信頼できないものになってしまう」と不安視した。

■システムのトラブルはほかにも…

 新型コロナウイルス対策で、国が情報通信技術(ICT)を活用した事例では、ほかにもトラブルが相次いでいる。

 特に大きな問題となったのは、スマートフォン向け接触確認アプリ「COCOA(ココア)」の不具合だ。一部の利用者に感染者と濃厚接触した可能性があっても通知がされず、4カ月間も機能していなかった。

 保健所などが感染者情報をインターネット上のデータベースに入力する「HER-SYS(ハーシス)」は、手書きの感染者発生届をファクスで送付していた状態を改善しようと、厚生労働省が集計ミス防止や負担軽減を目的に導入。しかし、逆に入力が負担となり、システムを利用していない自治体が多いことが判明している。

 今月12日には全国各地の自治体のワクチン予約システムが障害を起こし、予約ができない状況が起きた。

■「入力作業の増加は本末転倒」

 なぜ多くのトラブルが発生するのか。ITジャーナリストの三上洋氏は、HER-SYSのほかにも「ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)」や「ワクチン接種記録システム(VRS)」など複数のシステムが乱立していることが最大の要因だと指摘。システムが連携しておらず現場の負担が増しているとした上で「IT化は効率化のためにするはずが、現場の使い勝手を無視し、入力作業が増えているのは本末転倒」と批判する。

 9月に創設されるデジタル庁が主導して整備する予定の「ガバメントクラウド(政府クラウド)」で一括化するのが望ましいが、現状では難しく、「現時点では、ワクチン予約については日時指定をして混乱しないようにするなど、現場に負担をかけないように費用と人員をかけるべきだ」と話した。

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