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【話の肖像画】女流囲碁棋士・謝依旻(30)(10)5冠独占から11年ぶり無冠

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「第28期女流名人戦三番勝負」第3局に勝ち、9連覇を達成=平成28年3月、東京都千代田区の日本棋院
「第28期女流名人戦三番勝負」第3局に勝ち、9連覇を達成=平成28年3月、東京都千代田区の日本棋院

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 《平成19年に奪取した女流本因坊は、23年に5連覇を達成。女性として初めて名誉称号を名乗る資格を得た。翌24年には女流名人でもその資格を獲得した》

 連覇できたうれしさより、毎回ギリギリの戦いだったことが思い出されます。負けてもおかしくない対局ばかりで…。女流名人は4連覇したとき、5連覇を狙いたいと思いました。「名誉女流名人」を名乗れるのは先(引退か60歳になったとき)ですが、子供のころからあこがれのタイトルだったので。それで5連覇を達成したら、区切りの「10」までは遠いけど一回一回防衛しようと。

 《28年春に、女流名人通算5期の実績がある青木喜久代八段に勝ち、女流名人9連覇を達成。同年夏、新設された扇興杯女流最強戦で向井千瑛(ちあき)五段を破り優勝。前年秋には女流本因坊を奪還しており、初の女流5タイトル独占を成し遂げ、第一人者の地位を盤石にした》

 結果としてはそうかもしれませんが、自分が第一人者とは(当時も)思っていなかった。終盤に逆転する碁が多く、よい内容ばかりではない。第一人者としてイメージするのは、圧勝するタイプ。今の崔精(チェ・ジョン)さん(韓国棋院九段)と同じような立場だったら、そう思うのかなあ。彼女の碁にはスキがない。私はスキだらけ。とくに当時は逆転したり、されたりが多かった。実力差がないから、そうなるんです。

 たくさんタイトル戦に出て、精神面では強くなったかもしれません。負けたらどうしようとか、よく頭に浮かんでいました。すぐに消し去りますけど、心配は心配。三番勝負で1回勝っても、まだ防衛できていないんだ、とか。勝っても負けても、ミスした場面を思い出しちゃう。記憶に強く残っているから、思い出すのはしようがない-と今では思えるようになりました。次の対局もあるから、負けたときは考えすぎないようにしようと、以前より感情のコントロールができるようになったのかもしれません。ミスをしないようにするという当たり前のことも、人間がする以上、当たり前にできないんですね。(防衛して)1年たって、同じ状況になっても、前回なんとか乗り越えられたから、今度も頑張れるかも-とか、何カ月も前から考えすぎても仕方ない、プレッシャーは少しずつ解消すればいい-とか。一回一回が勉強でした。

 《20代半ばを過ぎたころ、新星が囲碁界を席巻した。藤沢里菜女流立葵杯だ。10代後半から次々とタイトルを獲得していった自らと同じ軌跡をたどるように、タイトルを奪っていく。29年の女流名人戦、翌30年の女流本因坊戦でも藤沢女流立葵杯に敗れ、11年ぶりに無冠へ陥落した》

 里菜さんとは27年の女流本因坊戦から、4期続けて対戦しました。取って取られて、取って取られて…。結果は残念ですけど、それも実力。自分を責めるものでもない。優勝というのは一番の人が勝つということ。負けたのは何かが足りなかった。寂しい感じではなかったですね。また頑張るしかない、と。実力だったのか、努力が足りなかったのか、あるいは精神力なのか…。ほぼ実力だと思うけど、何かで補えるとしたら努力だけ。頑張るしかないです。(聞き手 伊藤洋一)

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