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【政界徒然草】小泉氏、石炭火力に制限 持前の突破力も根回し不足も

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記者会見に臨む小泉進次郎環境相=2月25日、国会内(春名中撮影)
記者会見に臨む小泉進次郎環境相=2月25日、国会内(春名中撮影)

 小泉進次郎環境相が石炭火力発電所の輸出支援要件の厳格化を見据え、経済産業省など関係省庁と協議を始める方針を表明した。石炭火力は地球温暖化の要因とされる二酸化炭素を大量に排出し、欧州やNGO団体からの批判が強い。小泉氏は石炭火力の海外展開を抑え、環境立国・日本の復権を狙うが、根回し不足は改善されず、経産省側とあつれきも生んでいる。

 「新型コロナウイルスの危機に直面しているが、もう一つの危機が気候変動だ。石炭(火力)について、固定観念で議論するのではなく、世界で何が起きているのか。ファクトを洗い出したい」

 小泉氏は1日、省内に設けた「ファクト検討会」の会合で、こう強調した。

 同会には、気候変動を専門とする高村ゆかり東大教授らの有識者が参加。国内外の石炭火力に関する技術や価格競争力について最新の状況を議論し、「ファクトブック」を作製する。これを石炭火力輸出政策の見直しに向け、経産省や財務省との議論の参考にする考えだ。

突破口はブンアン2

 昨年12月にスペインで開かれた国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)を前に、小泉氏は政府代表演説に石炭火力発電の輸出を原則認めない方針を表明しようと、官邸との調整に挑んだ。しかし「発展途上国を中心に需要がある」との理由で折り合いはつかず、小泉氏は結果的に国内外で批判を浴びた。

 巻き返しの機会として定めたのが、ベトナムで建設を計画する石炭火力発電所「ブンアン2」の動きだ。日本の政府系金融機関が融資するが、建設は中国や米国のプラントメーカーが担当する。

 平成30年7月に閣議決定したエネルギー基本計画では、政府の海外での石炭火力発電所の導入支援を行う条件は「相手国からわが国の高効率石炭火力発電への要請があった場合」などに限定している。小泉氏は「ブンアン2」が、政府の輸出支援要件に合致しないとして、今年1月の記者会見で、計画の撤回も視野に問題提起を行った。

問題視の理由

 小泉氏が石炭火力輸出を問題視するのは、海外の冷ややかな視線を直接浴びているからだ。

 「今では環境先進国としてみられていない。環境先進国・日本としての復権を少しでも前に進めたい」

 「COPの最前線に立つのは環境相。国際社会から石炭火力の批判に覆われ、先進的な取り組みが伝わらない形で、大臣を送り出すことがあってはならない」

 小泉氏は2月25日の会見で、石炭火力発電の輸出要件について関係省庁と議論する方針を示したうえで、こう強調した。

 「脱石炭」は世界の潮流となりつつある。欧州を始め、2030年までの石炭火力発電の廃止を宣言する国が相次いでいる。一方、日本は原子力発電の再稼働が進まず、逆に石炭への依存を強めている。

 小泉氏が力を入れる理由には、別の見方もある。環境省幹部が指摘するのは「6秒の沈黙」だ。

 小泉氏は、昨年9月に渡米した際、海外メディアから石炭火力発電を減らす手法を問われ、6秒間、言葉に詰まった後、「私は先週、環境相に就任したばかりだ」と言葉を濁した。

 小泉氏にとって屈辱だったのだろう。石炭火力削減への道筋をつけ、国際舞台での失態を挽回しようとの思惑もにじむ。

事前調整で混乱も

 小泉氏は「ブンアン2」の建設を見直すよう、政府のインフラシステム輸出戦略を担当する菅義偉官房長官らに再三訴えた。

 だが、政府はベトナム政府と「ブンアン2」建設に向けて合意しているだけに、閣僚1人が異論を唱えても、見直しの機運はなかなか芽生えない。菅氏は2月23日、首相官邸で小泉氏と向き合い、「ブンアン2」の建設を続行すると“最後通告”したという。

 ただ、小泉氏はその場で建設続行を認めつつ、関係省庁間で石炭火力の輸出支援要件の見直しに向けた協議を始める合意を取り付けた。協議の成果は、政府が6月にまとめる改訂インフラシステム輸出戦略の骨子に盛り込まれる。

 ただ、小泉氏は経産省側の感情を逆なでするミスを犯した。

 小泉氏は2月25日の会見で、菅氏らとの合意を受けた今後の輸出支援要件のあり方について「より厳しく、が当然な話。議論の結果、このままなんてことは、100%あり得ない」

 小泉氏は2月25日の会見でこう強調した。だが、梶山弘志経産相らとの事前調整は、石炭火力輸出の要件について「協議する」でとどまり、小泉氏が言う「厳格化」ありきではなかった。

 複数の環境省幹部によれば、梶山氏は、一時小泉氏の電話に答えないほど、発言に激怒したという。

 環境省の次官経験者は「突破型の小泉氏を支えるのは大変だが、官僚にはできない思い切った方針と発想を打ち出してくれる」と理解を示す。一方で、小泉氏に近いベテラン議員は「根回し不足だ。閣内なんだから、仁義を重んじるのが当然。正論が正しいとはかぎらない」と政治家としてまだまだ“発展途上”だと指摘した。

(政治部 奥原慎平)

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