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【装丁入魂】グラフィックデザイナー・鈴木千佳子さん 大人の女性の多面性表現

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『今夜 凶暴だから わたし』
『今夜 凶暴だから わたし』

 ■『今夜 凶暴だから わたし』高橋久美子・詩 濱愛子・絵(ちいさいミシマ社、2400円+税)

 昨年12月に刊行された本書は、ロックバンド「チャットモンチー」の元ドラマー、高橋久美子さんによる詩と、イラストレーターの濱愛子さんの情感あふれる絵が織りなす詩画集だ。

 バンド時代の高橋さんは、疾走感あふれるみずみずしい詩が特徴だったが、本書で描かれるのは30代半ばの女性。ちょっと凶暴な気分になった夜中の散歩の高揚感など心の動く場面を30編の詩に込めた。《三十五歳の女は どんなことを考えていたら 普通なのだろうか》《私は私でない私になりたい》といった、大人の女性の内面が鋭い感性ですくいとられている。濱さんの絵は、奔放でちょっと怖くて、よく見るとユーモラスだ。

 装丁を担当したのは、グラフィックデザイナーの鈴木千佳子さん。「詩画集なので詩と絵が両方ある。カバーは、タイトルと合わせたときに意味を想像するような絵にしました」という。

 女性の横顔とともに描かれた、たくさんのモノ。室内なのか、靴下や歯ブラシも目につく。黒く描かれたのはバットだろうか? タイトル部分は絵と分割され、落ち着いたベージュにシンプルな書体。カバー上部は切断され、サーモンピンクを基調とした本体のイラストの一部がのぞく。鈴木さんは「繊細な視点やかわいらしい瞬間など女性のさまざまな表情が詩と絵で表現されています。本文の気分をそのまま表したかったので、コラージュのような見え方にしました」。帯とカバー、本体で異なる質感の紙を使ったため、触れる場所によって違った手触りになるのもおもしろい。

 四六判変形と、通常の単行本とほぼ変わらないサイズだが、編集担当の星野友里さんは「家に飾っておくより、持ち歩けるようなイメージです。仕事をしたり、母親として過ごしたりしている自分から、ふとわれにかえったときに読み返してもらえたら」。

 詩と絵が呼び起こすのは、日常で見過ごしてしまいがちな感情の数々。情報があふれ、自分の心に向き合うのが難しい今こそ、手に取ってほしい一冊だ。(油原聡子)

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