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【ゴッホを語る】(4)作家 玉岡かおるさん

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玉岡かおるさん
玉岡かおるさん

 試行錯誤するゴッホ。画家仲間と論争するゴッホ。正気を失うほど絵に命をかけるゴッホ…。「ゴッホ展」では、弟のテオらに宛てた手紙の言葉が、作品とともに印象的に展示され、まるで彼がそこにいるような気がしました。いいものを描こうと題材を探し、手法を考案し、のたうち回っている。私も物書きとしてじーんとくるものがありました。苦悩や成長の過程、人間ゴッホの心の航跡に迫る展覧会だと思います。

 ゴッホといえば、「ひまわり」に代表される強烈な色彩のイメージですが、「ジャガイモを食べる人々」など、ハーグ派の影響を受けた土色の作品にはびっくりしました。これがゴッホなのかと。さらに彼は、モネやピサロ、シスレーら印象派の影響を受け、点描なども取り入れて豊かな色彩へと画風を変化させていきます。何でも吸収しようとする柔らかな感性の持ち主だったのでしょう。画家としてのさすらいの跡がよくわかります。

 「糸杉」は、これぞ“ザ・ゴッホ”という極め付きの一枚。天に向かって真っすぐに伸びる木の生命力、躍動感が伝わります。ゴッホはなぜ、この糸杉という木にひかれたのでしょうね。私も吸い寄せられるように長い間見入ってしまいました。

 そして、人生の晩年に描いた「薔薇(ばら)」は、決して弱々しい絵ではありません。清(せい)楚(そ)な色彩の中に見られる静かな強さ。花瓶にあふれんばかりに生けられた薔薇からは、10年間、絵を描かずにいられなかったゴッホの生命の横溢(おういつ)が伝わってきます。(横山由紀子)

=おわり

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