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【ゴッホを語る】(2)落語家 桂春蝶さん

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フィンセント・ファン・ゴッホ「薔薇」 (c)National Gallery of Art, Washington D.C., Gift of Pamela Harriman in memory of W. Averell Harriman
フィンセント・ファン・ゴッホ「薔薇」 (c)National Gallery of Art, Washington D.C., Gift of Pamela Harriman in memory of W. Averell Harriman
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 落語は、まずは古典を勉強して技術を磨いてこそ、新しい解釈や創作ができます。ハーグ派に絵の基礎を学んだゴッホの初期の作品には、若手の勢いのある芸を見ているような、みずみずしさを感じます。そしてパリで出会った印象派に、自分にはない新しい価値観を見いだし、その技術を取り入れた。自分の表現を模索する中で、「これこそ探していたものだ」と感じたのかもしれません。

 ゴッホは感受性によって支えられ、呪われ、潰された。感受性が、彼の創造の根幹だったのだと思います。芸術作品の素晴らしさはアーティストの苦悩の量に比例します。泥が濁っているほど、ハスがきれいに咲くのと同じです。だから、心が揺れていないとつくれない。ゴッホは悩みや苦しみのすべてに向き合って激しく揺れ続け、負の感情をエネルギーに変えた。作品からは、美しさだけでなく、根底に流れる彼の業を感じます。

 でも苦悩し続けたアーティストには、その先に、どんな状況でもハスを咲かせられる段階がくるんです。「薔薇(バラ)」は、その段階にいきかけている作品ですね。さんざん難しいことを難しく描いてきたゴッホが、美しいものを素直に描いている。今回の展示作品の中では突き抜けていると思います。とても感動しました。ただゴッホは真にその段階にたどり着く前に、心の揺れに耐え切れずに幹が折れ、死を選んでしまった。とても残念ですが、このはかなさもまた、卓越した技術とともに彼の魅力なのでしょう。(藤井沙織)

落語家の桂春蝶さん
落語家の桂春蝶さん
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