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【ぐんまアート散歩】さざえ堂の螺旋巡りを絵画、映像、音響で再現 太田市美術館・図書館

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高橋大輔「無題(J,C,G,M)」(2018-19年、作家蔵)
高橋大輔「無題(J,C,G,M)」(2018-19年、作家蔵)

 「さざえ堂」という不思議な構造をした寺院がある。その名の通り、巻貝の「さざえ」(栄螺)のような螺旋(らせん)状の構造をしているため、そう呼ばれる建築物で、外観は2階建てであるにもかかわらず、内部に入ると3階建てになっていて、時計回りの一方通行で、同じ場所を二度通らないようにできている。

 それぞれの階には、秩父・坂東・西国地方の計100体の観音像が奉安されており、1階から3階へ進むと、それらすべてを拝観でき、簡略化した「百観音巡礼」が実現されるのである。江戸時代の後期、関東から東北にかけて、このような寺院が建てられたという。

 現在、江戸時代にルーツを持つ「さざえ堂」としては6棟が現存しており、東京、埼玉、茨城、福島、青森、そして群馬県内の太田市にも、そのひとつとして曹源寺さざえ堂がある。

 曹源寺さざえ堂は、埼玉県本庄市の成身院百体観音堂、福島県会津若松市の円通三匝堂とともに「日本三大さざえ堂」と称され、2018(平成30)年12月には、国指定重要文化財となった。寺院内をぐるぐると歩き回りながら観音像を拝観する体験は特別なものだ。15(同27)年8月から17(同29)年10月にかけて本堂の大規模補修事業が実施された際に発見された、1800(寛政12)年のものもあるという壁面への参拝者の墨書(名前、住所、参拝日時など)も、大変興味深い。

 さて、太田市美術館・図書館では、太田に曹源寺さざえ堂があり、それが国指定重要文化財に指定されたことを機として展覧会を企画した。だが、6日から始まる本展は曹源寺さざえ堂を歴史的に検証しようとするものではない。「2020年のさざえ堂--現代の螺旋と100枚の絵」というタイトルで、「さざえ堂」、そして「螺旋」をテーマに現代のアーティストが作品を発表するという内容だ。当館が、さざえ堂同様、3階建ての構造であることも企画の着想源である。

 これがずいぶんと風変わりな展覧会になりそうだ。日本画家の三瀬夏之介が墨を基調とした大作を天井から吊り下げたり、床に自立させることで螺旋のような空間を作り出したかと思えば、音楽家・アーティストの蓮沼執太が曹源寺さざえ堂と当館を歩いて音の採集と映像の撮影を行い、それら(音と映像)を一部重ね合わせるように展示する。さらにアーティストの持田敦子が展示室の壁を回転可能な構造にして迷宮のような空間を作り出し、画家の高橋大輔が、百観音巡礼にならって1階から3階まで計100枚の絵画(油彩画)をかける。

 さざえ堂元来の面白さである堂内を歩き回ることと拝観を同時に行うような体験を、本展でも美術館として実現できたなら、ここでしか得られない特別な体験を来館者の皆さまに提供できるのではないかと思う。(太田市美術館・図書館学芸員、小金沢智)

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