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【ビブリオエッセー】画家ゴッホの生き方表す 「ゴッホ〈自画像〉紀行」木下長宏(中公新書)

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 夫がこの年末年始にまとめ借りをするというので図書館へついて行き、目についたのがこの本だった。1月25日から神戸で開かれる「ゴッホ展」の見学に役立てばと思ったのだ。帰宅後、家事の合間に読み進め、何点かの自画像や風景画を眺めていると、今まで漠然と見ていた絵の印象が少し違ってきた。

 自画像や風景画がその時その時の画家の心もようを映している。そこで改めて思う、ゴッホの周囲にはよき理解者や協力者もいたのになぜあれほど孤独だったのか、考えれば考えるほど頭がこんがらがってきた。

 暗い自画像から明るい自画像まで解説を読みながら見ると発見がいっぱい。太陽がふりそそぐ「アニエール公園の風景」には麦わら帽子をかぶった本人らしき人物が描かれているが、やがて絶望を抱え命との闘いをする画家の絵とは思えない明るさだ。

 アルルで、「日本の僧侶になった自画像」と題して描いた一枚にも不思議なムードがある。日本へのあこがれがそれほど強かったか。自分をモデルに描いてくれたロートレックやラッセル、ゴーギャンらの気持ちをどう受けとめていたのだろう。

 最後の“自画像”と著者が考える『麦の穂』は人物がどこにも描かれていない。「…『まるで自分自身が花であるかのように生きること』の大切さをそっと語りかける絵である。…自画像への探求は、この絵へと辿り着いて、彼の遺言をここに聞くことができる」。「諦め捨てた種子(たね)を…次の花を咲かせる苗に変え育てるために…」。そこにゴッホの生き方が現れていた。

 奈良県上牧町 J・M 82

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