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【第162回芥川賞】「鈍重の歩みでも伝われば」 「背高泡立草」著者の古川真人さんが会見

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第162回芥川賞に決まり、記者会見する古川真人さん=15日夜、東京都内のホテル
第162回芥川賞に決まり、記者会見する古川真人さん=15日夜、東京都内のホテル

 「背高泡立草(せいたかあわだちそう)」(すばる10月号)で第162回芥川賞に決まった古川真人(まこと)さん(31)は濃紺のスーツに白シャツ、紺のネクタイ姿で東京都内の会見場に現れた。「2人で向き合って」というカメラマンの注文で、直木賞に決まった自分より背の高い川越宗一さん(41)を見上げるようなしぐさで報道陣を笑わせた。

 --今の気持ちは

 「2016年に(「縫わんばならん」で)新潮新人賞を取って、担当編集者の方と打ち合わせをする機会があった。帰りの地下鉄に向かうとき“なんでこうなったんだろう、これからどうなるんだろう”と、悪い意味ではなく急にとんでもない場所に出てきた感覚があります。今も同じような、これからどうなるんだろう…というのが率直な気持ちです」

 --どなたかに報告は

 「とくにない、かな。(化粧室に入っているときに)高校の同級生から電話があり、“いまトイレしてる”と」

 --候補4回目での芥川賞を射止めた。うれしいとか、ホッとするような感覚は

 「まだない。おそらく2、3日後に生活が日常に戻ったらしみじみ、あるいはシャンプーしているときにほくそ笑むとか…。うれしいと味わうまでは、ないですが、候補になるたびに喜んでくれる人がいて、そういう人たちが喜んでくれていると思うと、うれしいことだとは理解している。親族だったり、学生時代の知り合いだったり…」

 --長崎県内の島を舞台にした作品。島田雅彦選考委員に「もっと書けるのでは」との選評があった。今後はどんな作品を

 「具体的にこうだ-というのはないが(舞台を)島から出てみたいというのはある。繰り返し(島が舞台の作品を)書くと、触れてこなかったこと、触れたくなかったことを無視して、書きやすいものを延々と書いてしまう恐れがある。自分にとって不慣れなものや未知のものも、書いていこうと思っている」

 --以前、芥川賞は通りたくはないが、通らなければいけない関門と話していた。実際に決まってどうか

 「いざ取ると、“マジかよ”と、アワワ…しているのが正直な気持ち」

 --九州の方言が巧みに描かれている

 「自分が得意というより、一番スラスラ出てくる。言葉とともに考え、動作もついてくる。それがたまたま島の言葉や福岡の言葉だったということ」

 --かっこいいスーツで決めてきた

 「革靴は痛い。よく(社会人は)みんな履いているなあ。あとネクタイは久しぶりに巻いた…。自分で巻けずに編集の人に巻いてもらった」

 --地域の歴史を掘り下げたのが評価されたよう。その狙いは

 「短編連作の形式なら、時間を思いきり飛ばすことをやってみたかった。それが狙い」

 --大学中退(国学院大文学部)から、きょうの日が来るようなことは夢みていたか。あのころの自分に伝える言葉があるとしたら

 「ありえないことの妄想として考えていたかも。ゴロゴロしていた自分には、“なんとかなったから、そのまま寝ててもいいんじゃない”と」

 --落選が続くなかで、島以外の別のテーマを書こうとの思いは

 「ぼく自身に手札がない。主人公、登場人物がガラッと変わっても書ける作家はいらっしゃる。言語の運動神経がいい人です。自分はそうではない。鈍重に、同じことをくどくどと、でも読んでほしいと思っている人には伝わっていくような遅い歩みの書き方しかできないのではと、ずっと思っていた。違うのを書いてみようという器用さは持っていなかった」

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