PR

きれい事の中に毒を 詩人・谷川俊太郎さん 詩集「たったいま」出版

PR

今も詩の依頼が後を絶たず、毎日詩と向き合うという谷川俊太郎さん(川口良介撮影)
今も詩の依頼が後を絶たず、毎日詩と向き合うという谷川俊太郎さん(川口良介撮影)

 日本を代表する詩人、谷川俊太郎さん。最初の詩集「二十億光年の孤独」を刊行してから68年。詩作と並行し、テレビアニメ「鉄腕アトム」主題歌の作詞や米漫画「ピーナッツ」の翻訳、映画・ラジオの脚本、エッセーなど、さまざまな“書く仕事”をしてきた。

詩作は妻子を養うため

 「詩人になりたいと思ったことはないんだよね。(いろいろな仕事をしたのは)妻子を養うために仕方なくやってきた面もある。他に能がないから。詩はそのころあんまり好きじゃなかった」

 昭和55年創刊の講談社の児童書レーベル「青い鳥文庫」で初となる詩集「谷川俊太郎詩集 たったいま」を令和元年12月に出した。書き下ろしの詩「何か」を除き、同文庫編集チーム副部長の山田智幸野(ちさの)さんが、これまでの谷川さんの詩から音楽をテーマに選び、画家・イラストレーターの広瀬弦さんの絵を入れて構成した。

 書名に選んだ「たったいま」は、「たったいま死ぬかもしれない」の1行から始まる「死」をテーマとした詩。本を手にして開いたときに最初に目に入るそでに、この詩の出だし4行を入れた。一方で、帯には「生きる」の詩の最初の6行を入れた。「生きているということ いま生きているということ」のフレーズが繰り返されるこの詩を、小学校の国語の教科書で読んだ人も多いだろう。書名選びも含めすべて山田さんのアイデアで、谷川さんは「そでに『死ぬ話』が出てくる本ってないんじゃない? 推理小説は知らないけど、少なくとも詩集ではないと思う。これは編集者の功績だから、ちゃんとそう書いてね」と注文をつけた。

 唯一の書き下ろしの詩「何か」は、紛争が絶えない世界情勢への皮肉が込められたような詩だ。最後の1行が「ころしあう」。「もう少し希望の持てる終わり方を期待していた」と記者の感想を告げると、「だって今の世界の状況がどんどん頭に入ってきちゃうから。悩んでいるんですよね、どうすればいいんだろうと。自分は無力なんだけど、気になっちゃって。詩というのは基本的にきれいごとを書くものなんだけど、でもやっぱりその中に毒を入れなきゃいけない、みたいなのがありますね」。

 子供向けの詩集でも手加減はしないのだ。

子供時代から電気少年

 子供のころから“電気少年”で、オーディオなどの電気製品や自動車が好きなのは今も変わらない。詩を書くのはMacの端末だ。ネットフリックスで映画を観賞し、アマゾンで本を取り寄せる。便利な世の中をありがたく思いながら、書店で本が買えないことには申し訳なさも感じている。

 妻子を養う必要がなくなったころから詩が好きになってきた。米寿を迎えた今も詩の依頼は絶えず、毎日詩と向き合う。

 「毎日詩をいじっています。書いたものを推敲(すいこう)したり、新しく書き始めたり。他に楽しみがないから。昔はもっと面白いことがいっぱいあったけど、最近は外へ出るのも面倒くさくてね。今は詩を作っているときが一番楽しい。詩を書くのが生きがいみたいになっています」 (文化部 平沢裕子)

【プロフィル】谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう) 昭和6年、東京都生まれ。27年に処女詩集「二十億光年の孤独」を刊行。絵本、童話、翻訳、脚本、作詞なども手掛ける。50年に「マザー・グースのうた」で日本翻訳文化賞、平成22年に「トロムソコラージュ」で第1回鮎川信夫賞、令和元年に第47回国際交流基金賞など、受賞多数。詩集に「六十二のソネット」「ことばあそびうた」など。

この記事を共有する

おすすめ情報