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【第162回直木賞】「近年まれにみる大きなスケール」 浅田次郎選考委員が講評

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【第162回芥川賞・直木賞】会見に臨む「熱源」で直木賞を受賞した川越宗一さん=15日午後、東京都千代田区(川口良介撮影)
【第162回芥川賞・直木賞】会見に臨む「熱源」で直木賞を受賞した川越宗一さん=15日午後、東京都千代田区(川口良介撮影)

 川越宗一さんの「熱源」(文芸春秋)に決まった第162回直木賞。15日に東京都内で開かれた選考委員会の後、委員の浅田次郎さんが会見に臨み、選考経過について説明した。主な内容は以下の通り。

 「今回は初ノミネートの方が多く(4人)、混戦が予想されました。1回目の投票で川越さんが一歩抜きんでた形になり、第2回投票に4作が残りました。激論の結果、樺太(サハリン)を舞台にした川越さんの『熱源』に決定しました」

 「川越作品は、近年まれにみる大きなスケールで小説世界を築きあげておりました。登場人物も生き生きと魅力的に描かれており、しかも相当難しい史料を駆使して大きな小説を書かれました」

 --第2回投票の議論の流れは

 「3作を残すか、4作を残すかで議論になり、4作残りました。3作は『熱源』と、小川哲さんの『嘘と正典』(早川書房)、誉田哲也さんの『背中の蜘蛛(くも)』(双葉社)。それに湊かなえさんの『落日』(角川春樹事務所)を加えるかの議論でした。

 決選投票では、決定的な差ではないものの、川越さんが相当な点数を取り、小川さんが次点でした」

 --川越さんも小川さんも初ノミネート。作品の評価を分けた点は

 「川越作品は、ある意味でオーソドックスな構えを持った小説らしい小説。しかもスケールが大きいという特徴もある。小川さんの評価も高かったし、この人は(発想の点で)天才じゃないかと思いますが、ストーリーの膨らまし方がまだ足りないのではないか、という指摘もありました。つまり、分かりづらいということです。大衆小説のタイトルたる直木賞に関しては、普遍性、大衆性、分かりやすさが不可欠ではないか-というのが私の意見です」

 --初候補が4作。選考委員の意見は

 「むしろ面白いと思いました。いつものメンバーが出てくると、やっぱり前作と比較してしまう。横の相対評価でなく、縦の評価が出てきて難しくなってしまう。私は今回、湊さん以外全員の作品を初めて読みましたが、とても新鮮で、小説として公平に読むことができました」

 --他の3作への意見は

 「(4回目の候補となった)湊さんは、(作品の)数を書いていらっしゃるし、支持する読者も多い。ストーリーテリングに一日の長があるのは歴然で、この作品で取らない手はないという声もありました。ただ、文章がくどいのではないかとか、ちょっと分かりづらいという意見も交わされ、(最終的に)強く推す声が得られませんでした」

 「誉田さんも(作品の)数を書いている方。実力があるし、読みやすくもあるので、強く推す声がありました。ただ、(作品内の)ITのシステムがよく理解できない。いまなお、直木賞の選考委員の半分は手書きですから。このシステムについては、詳しい委員の方から『ちょっと時代遅れ』との指摘もありました」

 「呉勝浩さんの『スワン』(KADOKAWA)は面白く読みましたが、作品が映像ありきで、小説というスタイルを取っていないのでは、という意見が強かった。このタイプの小説はすごく多いんです、今。(作品内で)これだけの人間が死んでしまうからには、それなりの苦悩を作家自身が背負わなければ文学ではないと私は思います」

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