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【第162回芥川賞】古川真人さん、4回目の候補で栄冠 方言駆使、個性的な作風

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受賞作品「背高泡立草」の掲載誌
受賞作品「背高泡立草」の掲載誌

 九州の離島を行き来する人々の営みを、ゆったりとした方言を駆使して紡ぐ。そんな個性的な作風で、デビューからまだ3年余りなのに芥川賞にノミネートされること4回。「できれば通りたくないけれど、通らなければいけない関門」と話していた賞をようやく射止めた。

 受賞作「背高泡立草」は先祖の家の納屋の雑草を刈るために、長崎の島を訪れた親族を描く。捕鯨に従事した江戸時代の若者、満州へ渡った家族…。親族の女性たちのにぎやかなおしゃべりの合間に、過去の島の挿話が挟みこまれ、厚みのある時間が立ち上がる。

 実際目にした情景が作品の核にある。母方の親族が暮らす長崎の小さな島に毎年帰省してきた。過疎で寂れる港の風景と、大地に生い茂る草のイメージが次第に重なっていった。「人が行き来する港には今まで聞いたことのない言葉づかいの人も現れる。寂れていても、そこに歴史はある。草をはいでみたら、その下にびっくりするような歴史が層をなしてある…そういうものが書きたかった」

 故郷・福岡の高校時代に文芸部で小説を書き始め、文豪トルストイの大作「戦争と平和」を十数回も読破してきた生粋の文学青年。「小説は、一人の人間の一生を全部描ける」。21歳で大学を中退した後も、就職やアルバイトは一切せずに創作に励んできた。

 現在は横浜市内で会社員の兄と2人暮らし。家事はもっぱら自分の担当で、「おでんやカレーといった何日間も食べられる」料理が得意とも。「多くの人々の声が響き合うものを書きたい」。しばらくは家事もなおざりになる忙しさに追われそうだ。(海老沢類)

 ふるかわ・まこと 昭和63年、福岡市生まれ。福岡県内の高校を卒業後、国学院大学文学部に進学。21歳のときに同大を中退し、平成28年に新潮新人賞を受けた「縫わんばならん」で作家デビューを果たした。芥川賞候補は今回が4回目。

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