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「クジラはアートだ」 絵巻、浮世絵、工芸品など一堂に

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作者不詳の「古座浦捕鯨絵巻」。絵巻は現代のマンガの原型ともいわれる(白浜海洋美術館蔵)
作者不詳の「古座浦捕鯨絵巻」。絵巻は現代のマンガの原型ともいわれる(白浜海洋美術館蔵)

 クジラをテーマにした絵巻や工芸品などを一堂に集めた特別展「クジラはアートだ!」が、白浜海洋美術館(千葉県南房総市)で開かれている。令和元年7月に商業捕鯨が再開されたことでクジラへの関心が高まる中、クジラが食べるだけでなく、美術などの日本文化に大きな影響を与えたことを知る機会となっている。

(文化部 平沢裕子)

 江戸時代に開花

 四方を海に囲まれた日本では古来、クジラがさまざまに利用されてきた。縄文時代にすでに食用とされ、油はせっけんやろうそく、骨や歯は工芸品や宝飾品、ひげは生活用品や文楽人形のバネなどに活用。敗戦後には貴重なタンパク源としてクジラ肉が学校給食のメニューに度々登場するなど、日本人にとってクジラはごく普通に日常生活の中に存在していた。

 それが1980年代に始まる国際捕鯨委員会(IWC)の商業捕鯨の一時停止を受け、食卓にクジラ肉がのぼる機会が激減、多くの日本人にとってクジラを身近に感じる機会がほとんどなくなっていった。

 しかし、今年6月に日本がIWCから脱退、7月に商業捕鯨が再開され、再び食を含めたクジラ文化に注目が集まっている。同展を企画した「鯨と海女の研究室」室長で、同美術館学芸員の松浦信也さん(72)は「日本でクジラ文化が花開いたのは、クジラがたくさん捕れるようになった江戸時代中期の1600年代後半から。浮世絵や絵巻、びょうぶ絵など美しい美術品や工芸品のモチーフになっているが、知らない人も多い。アートからみたクジラの魅力や面白さを知ってほしかった」と説明する。

「鯨組」描いた絵巻

 特別展は、すでに展示を終えた鳥羽市立海の博物館(三重県鳥羽市)との共同開催。3つのテーマに分けられた館内には、万祝(まいわい、大漁祝い着の長はんてん)や浮世絵、掛け軸、茶道具、郷土玩具など約150点が展示されている。

 中でも興味深いのが、江戸時代の鯨組(鯨猟を目的とする漁民の組織)の活躍を描いた作者不詳の「古座浦捕鯨図絵巻」。船に乗り込んだ鯨組の男たちが悠然と泳ぐクジラの巨体に勇敢に挑み銛(もり)を投げて捕獲、浜に引き上げて解体するまでの様子が時系列で色鮮やかに描かれている。「時間の流れに沿って描かれた絵巻は今のマンガの原型。プロの絵師によって描かれた絵巻によって、当時の捕鯨がいかに大きな富を得る産業だったのかも分かる」と松浦さん。

 現実をしっかり描写

 また、江戸時代の絵師・蘭学者の司馬江漢(1747~1818、生年・没年は諸説あり)が、長崎に近い生月島で捕鯨漁を見学して描いた「捕鯨図掛軸」のパネル展示からは、江漢がクジラの姿や捕鯨シーンに感動して描いたことが伝わってくる。同館を訪れていた、ザトウクジラを長年撮影している写真家の西村純さんは「300年以上前の絵なのに古さを感じない。船に乗った男たちがクジラに銛を刺す様子など、想像でなく現実をしっかりと見て描いているのに驚いた」と話した。

 浮世絵でもクジラは格好の題材で、歌川国芳作「宮本武蔵の鯨退治」(復刻版)や歌川広重作「東海道五十三次之内 池鯉鮒」(同)など世界中の人々を魅了した作品が楽しめる。

 さらに、クジラのひげを使って作った贈答品の食器なども展示され、クジラの部位を捨てることなく利用してきた日本人の知恵がうかがえる。松浦さんは「クジラを丸ごと利用すれば環境保護にも役立つ。展示を見ることで、クジラの利用は日本が誇るべき文化ということを多くの人に知ってもらいたい」と話している。

 3月22日まで。開館は金・土・日・月曜日の午前10時~午後5時(天候などにより臨時休館あり)。一般500円、大学・高校生400円、小中学生200円。問い合わせは同館0470・38・4551。

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