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「ケンカが嫌い」 漫画家・蛭子能収さんが描く“軽やかな終活”

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「とにかく仕事は何でもしないとね」と話す漫画家の蛭子能収さん(三尾郁恵撮影)
「とにかく仕事は何でもしないとね」と話す漫画家の蛭子能収さん(三尾郁恵撮影)

 テレビのバラエティーや旅番組でおなじみ、漫画家でタレントの蛭子能収さん(72)。いつも柔和な表情を浮かべつつ、周囲の人の意表を突くマイペースで率直な発言が魅力だ。古希を過ぎて刊行したその最新刊は、これまでそれほど真面目に考えてこなかったという「老い」や「死」、またお金や仕事の問題など、長寿社会を生きる上での重大事について思いをめぐらせた蛭子流人生論だ。

 令和元年の現在、日本人男性の平均寿命は81・25歳。この数字がいま生きている人の余命を示すわけではないにしても、とりあえず一つの目安として自分に残された時間を「あと10年」と考えてみることにしたという蛭子さん。結局のところ、人生においての最優先事項とは何なのか。蛭子さんがたどりついた答えは、ごくシンプルだ。

 「とにかく、人生の目的は死なないこと。死んでしまえばそれ以上何にも楽しいことはないので、とにかく生きている方がいい。人生がつらくて死にたいと思う人もいるかもしれないけど、何と比べても生きているということには勝たない」

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 死ねばどうなるのか。正確なところは誰にもわからないが、自分という存在がなくなってしまうことは恐ろしい。いくら達観したり覚悟があるようなことを言ってみたりしても、「本当はみんなだって、絶対に死ぬことを恐れながら生きているはず」という。書名の「死にたくない」は、本心からのつぶやきだ。それを子供っぽいなどと恥じることなく、まずは自然な感情をごまかさずに素直に認めよう。蛭子さんは、そう勧める。

 そして人間、いくつになっても死ぬまではひたすら生きなければならない。生きている限りは、避けられる死のリスクは可能な限り遠ざけることが妥当だ。いつも穏やかで人当たりがいい蛭子さんだが、これまでの人生を振り返った上でどうしても譲れない一線はあった。

 「人の頼みを断るのが好きではないので、(テレビ局などから)注文が来たらなるべく受けるようにはしていましたけど、命が失われる可能性があるようなものは断り続けてきましたね。一時期はやったバンジージャンプだとか」

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 生きるにあたっては、何よりお金が必要だ。高校生の頃、アルバイトでバスの車掌を務めたことから始まり、上京してちり紙交換やダスキン配達などの仕事を経て、33歳で漫画家に。40歳ごろからはタレントとして芸能界でも活動してきた。今も「お金は欲しい」と率直に語る。70歳を過ぎても、働けるうちはずっと働き続けるつもりだ。

 「一番、やらないといけないのは仕事ですね。職業はなんでもいいんです。タレントとしてのオファーがないなら、駐車場の誘導員でも、マンションの掃除でも。あ、でもなるべくならラクな方がいいか(笑)」

 なぜお金が欲しいのか。お金があれば自由が得られるし、何より自由があれば人と争わずに生きていけるからだ。誰かに殺されないためにも、人と争って恨みを買うようなことはもってのほか。「ケンカが嫌いなんです。すれば負けるし。あまりケンカはしないでこの世を生きてきた」。人は群れるとおかしくなる。違う意見はまず受け入れ、しかし過剰にとらわれることをしない。長生きが当たり前になった世の中で、いかに人生における余計な摩擦を最小限にして、心穏やかに長寿を全うするか。蛭子さんの生き方には、肩肘張らない自然な「終活」のヒントが詰まっている。   (文化部 磨井慎吾)

【プロフィル】蛭子能収(えびす・よしかず) 昭和22年、熊本県生まれ、長崎市で育つ。長崎商業高校卒業後、看板店やちり紙交換、ダスキン配達などを経て漫画家に。タレントや俳優としても活躍中。著書に『ひとりぼっちを笑うな』など。

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