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【ノーベル賞’19】神戸の元教諭がファラデーに 吉野さんも読んだ「ロウソクの科学」実演

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「ロウソクの科学」実験 子供たちに「ロウソクの科学」をテーマに実験を行う、ファラデーラボ代表の森本雄一さん=1日午後、兵庫県たつの市(彦野公太朗撮影)
「ロウソクの科学」実験 子供たちに「ロウソクの科学」をテーマに実験を行う、ファラデーラボ代表の森本雄一さん=1日午後、兵庫県たつの市(彦野公太朗撮影)
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 ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さん(71)が研究者を志すきっかけとなったのは、英科学者のマイケル・ファラデー著「ロウソクの科学」だった。ロウソクの燃焼実験を通じて身近な科学の謎をひもとき、1世紀半以上にわたり世界中の子供たちを魅了してきた名著。そんなファラデーが残した科学の楽しさを直接伝えようと、元教員が、同書に登場する実験を再現する試みを続けている。

炎の光はどこに

 「ロウソクの火は何が燃えていると思う?」

 1日、兵庫県たつの市で開かれた科学教室。ちょうネクタイに黒の正装姿でファラデーにふんした「ファラデーラボ」代表、森本雄一さん(65)=神戸市灘区=が、消して間もないロウソクから立ち上る蒸気に、別のロウソクの火を近づけた。2つのロウソクの間隔は5センチ以上あるが、消えていたロウソクが再び燃え始める。子供たちから歓声が上がった。

 「ロウソクの蒸気が燃えているんだね。じゃあ炎の光はどこにあるかな」。森本さんは次々に疑問を投げかけては実験し、ロウソクの火が炭素の粒の燃焼によることを証明してみせた。

 森本さんが実演するのは、1860年末にロンドンで行われた青少年向けの「クリスマス講演」。晩年のファラデーが、ロウソクを題材に自ら実験し、科学の現象や仕組みを解き明かしてみせた。その講演録を収めたのが、吉野さんも読んだ「ロウソクの科学」なのだ。

「失敗が新たな発見につながる」

 「『ロウソクの科学』には、発見を通じて科学に引き込まれていく仕掛けや工夫がちりばめられている。まさしく科学の世界への『入り口』なんです」と森本さんは語る。

 森本さんは高校の物理教諭だったが、理科が暗記科目として扱われる現状に疑問を感じ、視察のため平成14年に英国を訪問。ファラデーが実験しながら考えることで科学の面白さに引き込まれ、数々の発見を成し遂げたことを知った。

 帰国後、若手教員らが実験を学べるファラデーラボを兵庫県加古川市に開設。26年から、英国人の元大学教授とともに、のべ約650人の子供や学生らに「ロウソクの科学」を伝えてきた。

 ファラデーは講演の中で「失敗から得られる教訓に導かれ、私たちは自然の探究者になる」と説いた。森本さんは「失敗から『なぜ?』が生まれ、新たな発見につながる。それが科学のスタート。吉野さんが子供時代に『ロウソクの科学』に出合ったように、まず一本のロウソクの火をともすところから始めてみてほしい」と呼びかける。

 吉野さんの受賞を記念し、22日は神戸市内の拠点で、25日には兵庫県立大で実演を行う予定だ。

 ■吉野さん、受賞記念講演でも紹介

 「子供のころに誰かにきっかけを与えられて自分の将来を決める時期がある。私は『ロウソクの科学』だった」。受賞決定後、吉野彰さんは科学者を志したきっかけをこう語った。

 吉野さんが同書に出合ったのは小学3、4年のころ。担任の女性教諭に「面白いよ」と薦められたという。「ロウソクはなぜ燃えるのか、なぜ炎は黄色いのか、芯は何のためにあるのか。子供心に『なるほどな』と思い、ケミストリーに進む刺激になった」と振り返る。8日の受賞記念講演でもこのエピソードを披露した。

 ファラデーが同書の中で強く訴えた「失敗の大切さ」は、吉野さんの研究姿勢にも受け継がれており、吉野さんも「失敗を何度も繰り返せれば、どこかで成功する」と述べている。

 2016年に医学・生理学賞を受賞した大隅(おおすみ)良典さんら世界的科学者の多くも、子供時代に同書に接し科学の道を志したことで知られる。(有年由貴子)

マイケル・ファラデー 1791~1867年。英科学者。ロンドンの貧しい鍛冶屋の家に生まれ小学校しか卒業できなかったが、独学で実験を重ね、電磁誘導の法則や電気分解の法則を発見するなど、物理学や化学の基礎を築いた。一般向け講演も数多く行い、子供たちに科学の魅力を伝え続けた。

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