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【ノーベル賞’19】未知の分野に挑戦 受け継がれた姿勢が福井謙一氏との“師弟受賞”に

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吉野彰さんが師事した福井謙一さん(京都大福井謙一記念研究センター提供)
吉野彰さんが師事した福井謙一さん(京都大福井謙一記念研究センター提供)

 ノーベル化学賞を受賞する旭化成名誉フェローの吉野彰さん(71)は京都大出身で、日本で初めて同賞を受賞した福井謙一京大名誉教授(1918~98年)の「孫弟子」にあたる。未知の分野に挑戦して突き詰めてきた福井氏は、多くの門下生を輩出。その研究姿勢は吉野さんにも受け継がれ、日本化学界の頭脳集団から2人目となるノーベル賞受賞者を生み出した。(ストックホルム 桑村大)

 「福井先生の基礎を大切にという気風がリチウムイオン電池の開発につながった」。受賞決定後、吉野さんはこう説明し、8日に行われた受賞記念講演でも、福井氏の流れをくむ開発だったと強調した。

 吉野さんは最先端の研究に憧れて京大工学部に進学。福井氏の一番弟子だった米沢貞次郎氏の研究室に入り、さまざまな化学反応を物理学の知識を用いて解き明かす「量子化学」の研究に明け暮れた。

 3年のとき、吉野さんはある基礎的な数式を説明できないことがあった。「量子化学の名前に憧れてきたんだろうが、基礎を大事にしなさい」。当時福井氏から、こう諭されたという。すでに世界的な研究者だった師の教えは、その後の研究活動の原点となった。

 米沢研で吉野さんの1年後輩にあたる吉川研一同志社大客員教授(71)は、福井研と米沢研が毎週開催した勉強会「量子化学研究会」が一番印象に残っている。両研究室の学生らが研究の進行状況や方針などについて分野を超えて議論。福井氏が出席することもあり、斬新な研究テーマを掲げた学生には「君、頭いいことを考えたね」と褒めることもあった。

 化学に物理の考えを適用する「フロンティア軌道理論」を提唱してノーベル賞を受賞した福井氏。「常識にとらわれない着想で研究する学生を評価していた」と吉川さんは振り返る。

 福井氏が学生の研究を直接指導することはまれで、両研究室の学生の間では「福井牧場」と呼ばれるほど自主性に任されていた。「自由に研究ができた環境だったからこそ、直感力を磨き、誰も挑戦しない分野に挑む力が養われた」

 福井牧場はこれまでに、スーパーコンピューター「京(けい)」の開発に携わった平尾公彦理化学研究所顧問や、ノーベル賞有力候補とされる北川進京大特別教授ら多様な分野の第一線で活躍する研究者を生み出してきた。

 10日(日本時間11日未明)の授賞式を前に、吉川さんはこう語る。「吉野さんは福井先生のもとで学んだ原理原則を大事にしながら、他の人がやっていない分野を切り開いて新しい世界を築いた。まさに、福井先生の教えを体現された」

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