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【ゴッホ展この1点】(6)「サン=レミの療養院の庭」1889年5月 静養と制作の日々

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クレラー=ミュラー美術館 (c)Collection Kr?ller-M?ller Museum, Otterlo, The Netherlands
クレラー=ミュラー美術館 (c)Collection Kr?ller-M?ller Museum, Otterlo, The Netherlands

 「庭で描いた僕の絵を受け取ったら、僕がここでさほど塞(ふさ)ぎ込んでいるわけではないことが、君にも伝わるだろう」 -1889年5月末~6月初め頃、弟テオへの手紙(サン=レミにて)

 1889年5月、ゴッホは南仏アルルから程近いサン=レミ郊外の精神科療養院に自ら入院した。

 前年の暮れ、画家ゴーギャンとの共同生活に破れたゴッホは、精神疾患の発作を起こした。自らの耳の一部をカミソリで切り落とし、なじみの売春婦に届けるという奇行は警察沙汰になったが、ゴッホ自身は一切覚えていなかったらしい。おびえた地元民は“狂気の画家”の幽閉を市長に嘆願。アルルに居続けるわけにはいかなかった。

 入院先の「サン・ポール・ド・モーゾール精神科療養院」はロマネスク様式の修道院だったところで、空き部屋をアトリエとして使わせてもらえたという。数週間は病院を出ることを禁じられたが、鉄格子が入った窓越しにアルピーユ山脈や麦畑などの風景が見えた。院内の庭で描くことも許された。手入れされていない庭は雑草が伸び放題だったが、本作を見ると色とりどりの花が咲き誇り、美しい調和を見せている。

 時折激しい発作に襲われたものの、それ以外のときは精力的に描いた。テオあての手紙でも、自分の病状を冷静に受け入れ、前向きに制作に取り組んでいたことがわかる。筆致は迫力を増し、ゴッホの作品は円熟味を増していった。(黒)

 「ゴッホ展」は上野の森美術館(東京・上野公園)で来年1月13日まで開催。

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