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【ノーベル賞’19】成果の陰に考古学の経験 化学と「発掘手法は全く一緒」

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ノーベル化学賞を受賞した旭化成名誉フェローが在学時に関わった文書を手に語り合う考古学研究会の会員ら=10月10日、京都市左京区の京都大学(桑村大撮影)
ノーベル化学賞を受賞した旭化成名誉フェローが在学時に関わった文書を手に語り合う考古学研究会の会員ら=10月10日、京都市左京区の京都大学(桑村大撮影)
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 ノーベル賞を受賞する旭化成名誉フェローの吉野彰さん(71)は、京都大時代に考古学研究会に在籍し、発掘調査に熱中した経験を持つ。実験や計算を重ねる化学とは一見すると畑違いの分野だが「この経験が研究開発で非常に役に立った」。世界的な研究を成し遂げた原動力の一端となったようだ。

 「大学で最先端の研究をやるならば、逆に一番古いことをやろうという単純な理由でした」。吉野さんは、考古学に携わった理由をこう説明する。

 溝を掘って遺跡の有無をしらみつぶしに確認する考古学の発掘現場。吉野さんはそこに研究開発との共通点を見いだしていた。「考古学の発掘手法は、研究開発と全く一緒。目新しいものはないと確認することは無駄ではなく重要なデータになる」

 京大の考古学研究会は59年の歴史を持ち、吉田キャンパス(京都市左京区)の部室には、吉野さんら歴代部員が記した会誌や調査報告書が今も残る。

 仲間とともに各地の発掘現場に足を運び、2年時には会長も務めた吉野さん。役割分担が重要となる発掘調査では、周囲の意見を聞き調整役を担った。樫原(かたぎはら)廃寺跡=京都市西京区=で発掘調査を担当した元奈良文化財研究所職員の佐藤興治さん(78)は、発掘の手伝いに来ていた吉野さんを「他の学生に比べて、まじめで穏やかな性格だった」と振り返る。

 調査後に発掘場所に団地を建てる計画に反対する動きが起こると、署名運動や講演活動の中心に。休日も街頭で熱心にチラシを配り、会誌に都市開発と文化財保全の苦悩をしたためたこともあった。

 《最近、増々激化してきた開発に伴う文化財の破壊に対処してゆく為の方針を改めて考慮せざるをえなくなった》

 さらに、後に自身が体現する言葉を新入会員に向けたエールとしてつづっていた。

 《考古学のもつこの問題にぶつかり、そこから得たものは皆さんが専門の学問に進まれたときにきっと役に立つと思います!》

 世界にその名を刻んだ先輩に対し、同研究会の現会長で文学部2年、小西匠さん(21)は「文理の枠組みを超えて好奇心からさまざまなことを探求されていた姿勢を見習いたい」と話している。(桑村大、小川恵理子、南里咲)

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