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百舌シリーズ33年で完結 逢坂剛さん「警察は日本社会の縮図」

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「警察に友人はいない。取材せず書くのが作家」と自らのスタンスを語る逢坂剛さん(古厩正樹撮影)
「警察に友人はいない。取材せず書くのが作家」と自らのスタンスを語る逢坂剛さん(古厩正樹撮影)

 伝説の殺し屋「百舌(もず)」との死闘を描き、テレビドラマ化もされた公安警察小説が最新刊「百舌落とし」(集英社)で完結した。30年以上続いたシリーズを振り返った作家の逢坂剛さん(76)は「警察組織は日本社会の縮図」と話す。

 登場人物が受けた損傷を想像すると、体がギュッとこわばる。“激しい”という表現では甘っちょろい、クライマックスの格闘シーンだ。西部劇やフィルム・ノワール(米犯罪映画)、邦画では「全部見た」という座頭市シリーズを参考にした。

 「読者に映像が浮かぶと言ってもらえるのはうれしいね。作家は自分の頭に浮かんだ映像を書いているわけだから。本当らしいウソを書くのが、作家の技量」

 最新刊では大物政治家が、まぶたを縫い合わされた状態で殺されているのが見つかる。過去作品と同様、鳥のモズの羽根が添えられた手口に、公安出身のキャリア警察官・倉木美希と元警視庁捜査1課の探偵・大杉良太、不良中学生から更生し生活経済特捜隊刑事になった娘・めぐみらが事件の真相を追う。

 昭和56年、前日譚ともいえる「裏切りの日日」を発表した。ミステリー小説といえば刑事警察が主流のなか、公安警察を取り上げた。当時は広告代理店に勤務するサラリーマン。日課にしている東京・神保町の古書店めぐりで発掘した資料・雑誌などで「警察はこんなこともやっていたのか、と。誰も手がけていない公安を書こう」と着手した。そこに登場した人物を起用したのが第1弾「百舌の叫ぶ夜」(61年)。「砕かれた鍵」などをへて第7弾で完結を迎えた。

 「シリーズにすること自体考えていなかったから、33年も続いたのか、と。3作までは馬力をもって書けるんです。あっと驚くトリック、そしてキャラクターを思いついた時点で、作品の70%はできている」

 馬力とは、読者にページをめくらせる力という。個性的な登場人物、疾走感あふれる場面展開はシリーズを貫く魅力だ。

 今作は防衛装備移転3原則の話題など、世情も取りこんである。「新聞や週刊誌は一番の情報源。広告会社にいたから世の中の動きには敏感だった。情報の流れ、時代の行く末を予見できるカンのようなものがあったのかと、今になって思うね」。北朝鮮の不穏な動きを扱った第2作『幻の翼』を執筆中の昭和62年に、大韓航空機爆破事件が発生。現実にヒントを得たと思われるのでは…と心配になったこともある。

 警察への反発や称賛があるわけではないという。「警察は管理された組織、逆にいえば管理しないと成り立たない仕事。管理化された日本社会の縮図ではないか…と、とらえたわけです。人間は管理されている方が楽だから。その代表として警察を書いてきた」と人気シリーズを振り返る。

 スペインを舞台にした61年刊行の『カディスの赤い星』で直木賞などを受賞。重蔵始末シリーズなど時代小説も得意にし、執筆範囲は広い。「あとは西部劇の小説版かな。日本ではジャンルとして成立していないから、西部小説を書いていきたいね」

 「百舌」に登場する大杉同様、禁煙歴が長くなった。酒量も風呂上がりのビール1杯と節制。百舌シリーズは完結したが、好物のとんかつを栄養源に、エネルギッシュに書き続ける。(伊藤洋一)

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