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「窓展」 心を開き別世界へ想像の旅 東京国立近代美術館

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アンリ・マチス「待つ」1921ー22年 油彩 愛知県美術館
アンリ・マチス「待つ」1921ー22年 油彩 愛知県美術館
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 光や風を取り入れたり、外の景色を眺めたりと生活にとって必要な窓。それゆえ美術の世界でも古くからモチーフとなって絵画などで描かれてきた。「窓」をキーワードにした展覧会「窓展‥窓をめぐるアートと建築の旅」が、東京・竹橋の東京国立近代美術館で開かれている。近代から現代美術まで約110点。窓とともに別世界の旅ができる。(渋沢和彦)

 窓が際立つ1点の油彩画がある。20世紀を代表する仏画家、アンリ・マチス(1869~1954年)の「待つ」。窓の外は青い海やまぶしい浜が広がる南仏の明るい景色。海辺の部屋にもまばゆい光が注がれ、2人の女性を浮かび上がらせる。一方の女性の手は浜にあるヤシと重なり、内と外が結ばれている。マチスはニースに借りたアパートで、こうした窓のある絵を多く描いていた。

 ピエール・ボナール(1867~1947年)の赤みを帯びた色彩が強烈な「静物、開いた窓、トルーヴィル」など魅惑的な絵画が多い中で、直接的に窓の存在を際立たせているのが写真作品だろう。郷津雅夫(ごうづ・まさお)(1946年~)の「Windows」シリーズはその1つ。写っているのは窓に身を寄せて外を見つめる人々だ。ニューヨークのダウンタウンでパレードの際に撮ったという。郷津は1970年代からニューヨークで活動し、40年以上も窓を主題に撮り続けてきた。窓から興味深そうに外を見ている人の姿は、外の光景がどんなものかを想像させ、同時に窓の存在を一層引き立てている。

越境シンボル

 窓は別世界への境界なのか。象徴的にそれを窓と意識させるのが「西京人」の「第3章‥ようこそ西京に-西京入国管理局」。「西京人」は、境界を超越したコミュニケーションをテーマに活動している中国、韓国、日本人アーティストによるユニット。本作は入国管理局から着想を得て、「西京国」という架空の国家を題材にしたインスタレーション。会場の一画には入国検査場がしつらえられ、入国する際の審査ゲートがある。そこから西京国に入るには「チャーミングな踊り」など、何らかの芸を管理官に披露しなければならない。インターネット上では瞬時に世界の人たちとつながり、国境を感じることはほとんどない。が、ヨーロッパなどでは難民流入が問題化し、国境を意識せざるを得ない状況がある。「西京人」は、ユーモラスに“国の窓”である国境を顕在化する。

 本展は窓を学問として多角的に研究する「窓研究所」が協力して建築も紹介された。窓に対する捉え方の差異や思想を読み取ることができる建築家のドローイングなどを展示。さらに同館の前庭には建築も登場した。建築家、藤本壮介(1971年~)の「窓に住む家/窓のない家」だ。彼が設計した大きな開口部が特徴的な住宅建築「House N」(大分県)の大型コンセプト・モデルで、実物とは別バージョン。大きな窓のある箱が2重の入れ子になっているのが特徴で、中を歩くと風を感じ、時間の経過とともに移ろう光や影を見ることができ、自然に溶け込んでいく感覚を味わう。

寛容さの象徴

 多くの人が利用する携帯電話やパソコンの画面は、ある意味では世界に開かれた窓と考えられるだろう。窓はもっとも生活に密着していながら、これまで日本の美術館では正面から取り上げた大規模な展覧会は意外にもなかった。その意味で美術と建築を網羅した意欲的な展覧会といえる。

 同館の蔵屋美香企画課長は「皆こころに余裕がないので他者に対して不寛容になっています。他者の言葉に耳を傾けなくなり、他者に対する想像力が失われています。いまここにいる自分とは別の場所への想像力の象徴である窓を通して、さまざまな場所、時代、考え方に心を開いてもらえればと願っています」と話している。

 「窓展‥窓をめぐるアートと建築の旅」は、来年2月2日まで、休館日は月曜(1月13日を除く)と12月28日~1月1日、1月14日。一般1200円。問い合わせはハローダイヤル03・5777・8600

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