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【沖島から-秋・みのり(下)】災害から子供守る 船で緊迫の避難訓練

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滋賀県警の警備艇に乗った6年生の子供たちは、警察官の話に耳を傾けた=10日午後、滋賀県近江八幡市(鳥越瑞絵撮影)
滋賀県警の警備艇に乗った6年生の子供たちは、警察官の話に耳を傾けた=10日午後、滋賀県近江八幡市(鳥越瑞絵撮影)
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 《震度5の地震が発生しました。建物に倒壊の恐れがあるため、直ちに避難を開始してください》

 琵琶湖に浮かぶのどかな沖島で、すっかり秋が深まった10月10日の昼下がり。島唯一の学校、滋賀県近江八幡市立沖島小に突如、緊迫したアナウンスが流れた。

 子供たちはすぐに荷物をまとめ、校庭近くにある桟橋へ向かう。いつもは朗らかな明石誠校長(58)も、引き締めた表情を浮かべ、桟橋で子供たちの人数を確認。ライフジャケットを着た子供たちは低学年から順に、滋賀県警の警備艇など3隻の船に乗り込んだ。

 この日は船を使った避難訓練。沖島近くで震度5の地震が発生し、島内の道路に崩落などの危険があるため、沖島小の児童が船で島外に避難する-という想定だ。

 今回は訓練のため島外には行かず、船は島をぐるりと回り、沖島漁港へ到着。それでもいつもとちがう雰囲気に、子供たちは緊張した様子だ。さっきまで「船に乗れる」とはしゃいでいた1年のたっぺい君(6)は、揺れる船上で山田太郎先生(36)の足にしがみついていた。

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 近江八幡市の約1・5キロ沖合にある沖島。全校児童14人のうち12人が島外から船に乗って沖島小へ通う。

 島民は「これまで島で大災害なんて起きたことがない」と口をそろえるが、昨年9月の台風21号では、強風による倒木で電線が切れて夕方から翌朝にかけて半日以上停電した。電力会社の人が島にたどり着けず、復旧が遅れたためだ。

 ひとたび災害が起きれば、公共交通機関が船しかない島は、たちまち周囲から孤立してしまう。だからこそ、島民らは子供たちの安全に細心の注意を払っている。

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 「子供たちには必ず無事に帰ってもらいたい」と語るのは、訓練に参加した「沖島通船」の冨田甚一(じんいち)船長(62)だ。

 沖島通船は島唯一の公共交通機関。子供たちも通学に利用しており、冨田さんは子供たちの日々の成長を目の当たりにしてきた。「島の外から通う子供たちが、島を元気づけてくれている」

 これまでに何度か、子供たちから「いつもありがとう」と書かれた手紙をもらった。「仕事に喜びを感じた瞬間だった」と振り返る。

 それだけに、近年各地で頻発する自然災害が気がかりだ。これから冬を迎えると、波が高くなる。船の操縦には一層の注意が必要だ。冨田さんは「訓練で改めて安全について考えたいと感じた」と話した。

 「訓練の船はいつもの船より速かったね」。子供たちは水難救助訓練の見学を終えると、感想を口々に言いながら、いつものように船に乗って帰っていった。静けさを取り戻した港は日が暮れるのが早まり、薄暗い。湖の上をひんやりとした風が吹き、湖岸に打ち寄せる波が音を立てた。

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 江森梓、花輪理徳が担当しました。次回は冬ごろに掲載予定です。

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