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安倍首相の「STSフォーラム」あいさつ全文

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科学技術に関する国際会議で講演する安倍首相=6日午前、京都市
科学技術に関する国際会議で講演する安倍首相=6日午前、京都市

 安倍晋三首相は6日午前、国立京都国際会館(京都市)で開かれた日本最大規模の国際会議「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム」(STSフォーラム)の第16回年次総会であいさつした。首相発言の全文は次の通り。

    ×  ×    

 尾身(幸次)議長、STSフォーラムを今年も実現なさいましたことをお喜び申し上げます。私、ここで何をお話ししようかと智慧を絞りますこと7年目と相成りました。実は今年、お話ししたい中身はあっさり決まりました。

 科学と技術は社会をよくするという尾身議長はじめ皆さまが奉じてこられた信念は、徹底的に正しいということ。いまこそ、科学と技術が果たせる役割に、私たちはみな、自信を新たにすべきだということ。つまり第一に、皆さまは正しい、第二に、皆さまはもっとできるという、この2点を強調し、皆さまの応援団長を買って出ようというのが、本年の私の意図であります。

 先ごろ日本政府は横浜で、「TICAD(アフリカ開発会議)」といって、1993(平成5)年以来、アフリカ各国指導者をお招きし、成長を論じてきた会議の7回目(TICAD7)を催しました。これに先立つ6月には、G20(20カ国・地域首脳会議)を大阪で開催しました。

 いずれの場においても、私たちは、科学と技術の役割を論じました。TICAD7は、SDGs(持続可能な開発目標)のためSTI(科学技術イノベーション)が重要だという点を確認しました。これこそは、STSフォーラム長年の主張と同じです。STI、つまり科学、技術とイノベーションは、SDGs実現に欠かせません。人工衛星から地表を見ることで、地域ごとの作付けがわかります。収量がわかれば、農業従事者の収入に予想がつきます。農業従事者のキャッシュフローが予測できるならば、ファイナンスが容易になります。例えばこのような活用方法が考えられるのです。

 一方、大阪G20に集まった世界のリーダーたちは、2050(令和32)年までに、海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロにすることを誓いました。私がうれしいことは、プラスチックには社会に対し、果たす重要な役目があることを首脳宣言で明記したことです。

 私たちは、20世紀が生んだ偉大な発明のいくつかを誇りに思うべきです。プラスチックはそのひとつです。プラスチックがなければ、生鮮食品を、一定の、運びやすい形に包装し、スーパーマーケットの棚に並べることなどできませんでした。プラスチックは、食物生産者と消費者を結ぶ、偉大な「イコライザー」でした。

 この先も必要なものなのですから、プラスチックを敵視したり、その利用者を排斥したりすべきではありません。必要なことは、ゴミの適切な管理であり、そのためにイノベーションに解決を求めることです。

 ですからこそ、日本政府は「MA」、「R」、「IN」、そして「E」、合わせて「MARINE」と呼ぶ途上国支援パッケージを始めます。MAは「Management Of Wastes」、つまり廃棄物管理、Rは「Recovery」つまり、海洋ごみ回収、INは「イノベーション(Innovation)」最後のEは「エンパワーメント(Empowerment)」で、廃棄物管理に携わる人々を社会の英雄にしようとする人材育成策です。この中でも、イノベーションの意義を強く打ち出したいと思います。

 とある日本の会社では、研究員たちが郊外の山に行っては、微生物集めに余念がありませんでした。ところが、なんと自分たちの会社の工場敷地内に、理想的な微生物が見つかるのです。それは1993(平成5)年のことでした。

 その微生物こそは、私たちが胴回りに脂肪をため込むように、自分の体の中にポリマーをためる力を持つもので、さんざん探し求めていたものだったといいます。これら微生物たちは自分たちの体内にポリマーをためる力を持っているのです。長い話を短くすると、その後、十分な量のポリマーをためこむ微生物をこしらえて、量産ラインで、生分解性プラスチックを作り出すことに成功するのです。

 常温で、海の中ででも分解できるというこのプラスチック。溶ける速度は、紙の中の繊維質セルロースと同じなのだそうです。石油由来ではなく、植物油がもとになり、石油で作ったプラスチックと同じ性能を獲得しながら、土の中、水の中でまた微生物に分解されるという「生分解性プラスチック」。「カネカ」という日本の会社の達成です。

 プラスチックと全く同じ性能を持っています。これはカネカという日本の会社が達成したことです。カネカの生産能力は、もうじき年産5000トンにもなります。しかしそれでもまだまだ僅かな量です。しかし、確かに量産されました。これは、私たち皆を、勇気づけてくれるような開発です。

 世界の風潮に今、さまざまなことへの「アンチ」が見受けられます。反成長、反資本主義、反グローバリズム、そして反プラスチック。もちろん、それぞれに背景、事情や思いがあることは私も知っています。しかし私は、対立を克服する途があることも知っています。それは未来へ続く途であり、それこそがイノベーションです。

 STSフォーラムに集う皆さまは、「問題」があると聞くと、「解決」したくなる積極性を共有しておいでです。問題があるとどうしても解決したくなる、その積極性に、私たちは多くを期待しています。科学と技術に人類の未来がかかっています。その中で、皆さまの役割はますます重要になります。ご自身のお仕事と、力に、今こそ一層の自信を持っていただければと願ってやみません。皆さんには力があるのです。ありがとうございました。

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