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【書評】『新聞という病』門田隆将著

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■正気を取り戻せと訴える

 朝日新聞のここが悪いという人はいくらでもいる。「ここ」だけじゃない。全てが悪い。

 慰安婦の嘘を30年も流して日本人を貶(おとし)めた。それだけでも廃刊ものなのにすっとぼけたまま。周りも甘い。週刊文春の「新聞不信」欄はずっと良識ある大新聞扱いだ。

 朝日不信を語った者も大方は去った。また朝日の独善復活かと思っていたら著者が本紙「新聞に喝!」に登場した。

 本書はそれを主にまとめたものだが、朝日とは因縁の吉田調書事件も入っている。あの東京電力福島第1原発事故で現場にとどまって仕切った吉田昌郎所長と部下の献身は世界が称賛した。

 政府事故調査委員会の吉田調書は非公開だったが、朝日はそれを入手して「部下七百人が命惜しさに脱走していた」と報じ、世界の称賛を嘲笑(あざわら)った。

 ネタが非公開文書だ。真偽を糺(ただ)す手だてはなかったが、著者は吉田所長と長時間インタビューし、部下の話も聞いていた。地道な取材で朝日の偽り報道を指摘して、朝日の嘘がバレた。

 執筆した記者は現場も取材していなかった。事実を書く気はない、いかに日本人を貶めるかしかなかった。この記者のように今の記者は取材しなくなった。それが新聞の堕落につながると著者は言う。

 取材しないくせに「私たちは戦争をしたい人たちとペンで闘っている」と嘯(うそぶ)いて「現実を見ない自己陶酔」状態にあるとその病の症状を指摘する。

 だから例えば中国や韓国の傍若無人には「植民地支配と侵略の被害者の痛みを忘れるな」と根拠レスの自虐史観を持ち出して正論を押さえ込む。

 めぐみちゃん事件も「日朝友好交渉の妨げ」と書き、蓮舫議員の二重国籍は「純粋日本人がそれほど大事か」になる。

 影響力と巧みな弁舌をすべて「日本人の貶めに使う目的は何なのか」と著者は朝日とそれに倣う新聞界に問うている。

 著者は土佐出身。潮風で鍛えた声は国技館でトランプ米大統領を振り向かせ、握手の栄を得ている。その大音声で今の新聞に正気を取り戻せと訴えている。誰よりもまず朝日新聞の記者に読んでほしい一冊だ。(産経新聞出版・880円+税)

評・高山正之(ジャーナリスト)

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