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次世代加速器ILC 誘致見送りなら国際的信用失墜も

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国際リニアコライダーの完成予想図(高エネルギー加速器研究機構提供)
国際リニアコライダーの完成予想図(高エネルギー加速器研究機構提供)

 次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」を岩手・宮城両県の北上山地に建設する構想について、日本学術会議の検討委員会は19日、「誘致を支持するには至らない」とする否定的な回答を決定した。日本の科学者の代表機関が示した見解は重く、日本への誘致実現は崖っぷちに立たされた。

 検討委が懸念を示した最大の理由は、巨額費用が他分野の科学研究予算を圧迫するのではないかという不安とみられる。検討委は加速器を使う素粒子物理学の専門家がほとんどいない。「圧迫される側」の目に脅威と映るのは当然で、審議の過程では委員から「科学は物理学だけではない」との意見も出されていた。推進側からは「始めから否定ありきで議論が進んできた」と批判の声も上がる。

 学術会議の主張に沿って誘致が見送られた場合、科学研究予算への圧迫は回避される。だが、世界的な科学者組織の合意によって進んできた構想を実現できなければ国際的信用を失い、今後は日本での大型国際研究プロジェクトが困難になる可能性もある。

 また、複数のノーベル賞受賞者を輩出し、日本のお家芸である素粒子物理学は近年、中国の台頭が著しく、大型加速器の建設計画も進んでいる。推進側の研究者は「日本にILCができなければ、中国は欧州やアジア諸国と手を組み日本を追い越すだろう」と話す。

 学術会議の指摘通り、ILCには巨額費用という大きな課題がある。だが実現すれば、日本が得る知見や経済効果も大きい。政府は学術会議の回答を重く受け止めなければならないが、慎重な見極めが求められる。(伊藤壽一郎)

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