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【虫撮り人】台風一過、復興の達人 クモの生息数全国最多の東京

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「クモ探しの秘訣は、何もないはずの空間に目を凝らすこと」と話す新海栄一さん=あきる野市留原
「クモ探しの秘訣は、何もないはずの空間に目を凝らすこと」と話す新海栄一さん=あきる野市留原

 長い脚、毒々しい色-。クモは嫌われる生き物の筆頭だろう。でも、人にとっては害虫を捕食してくれるありがたい存在であり、観察対象としても興味の尽きない生き物だ。

 そんなクモを観察するのに最適な季節が秋なのだという。今回はシリーズ「虫撮り人」秋の番外編として、東京都国分寺市に住むクモ研究の第一人者、新海(しんかい)栄一さん(69)と「クモ撮り」に出かけた。

 新海さんお薦めの場所は、東京都あきる野市留原の都立小峰公園。台風24号の首都圏直撃から2日後の3日朝、園内は倒木や折れ枝が随所にみられ、クモの巣もほとんどが壊滅してしまったはず、と思いきや…。

 園路の生け垣の枝の間に「秋の空の女王」の異名を持つジョロウグモの円形の網が軒を連ねるように張られていた。「半日あれば網は復旧できますから。台風一過で大忙しだったでしょう。クモはめげずに頑張りますよ」と新海さん。

 脚が1、2本なくなった個体が多いのは、台風の爪痕に違いない。

 アシナガサラグモのお椀(わん)を伏せたようなドーム形の網も、まるで団地のように連なっていた。この公園はクモが巣をかけやすくするため、わざと生け垣の刈り込みを控えめにしているのだという。

 新海さんが観察用の噴霧器で水を吹きかけると、ジョロウグモの網の三重構造が見やすくなった。中央に鎮座する大きな個体が雌で、上方に控える小さいのが雄。隅の方で小さな銀色の粒が動いている。

 「シロカネイソウロウグモです。自分で網をつくらず、ほかのクモの網に侵入して小昆虫などを食べるちゃっかり者ですよ」

 よく見ると、メタリックなヘルメットを被ったみたいな姿に愛嬌(あいきょう)がある。

 新海さんは中学時代、生物教師の勧めでクモの研究を始めたという。「いろんな種類の網があることに気づいて調べだした。チョウの研究者はたくさんいても、クモ学をやる人は少ないから、未解明の領域がたくさん残されていた」

 高校時代からクモ学者の会合の末席に座るほどの熱心さで、新種の網型を次々発見し、イセキグモ類の投げ縄式捕虫行動を発見するなど功績は数え切れない。家業の写真館経営を継ぐかたわら、環境指標としてのクモの分布調査で全国を旅し、撮影してきた。

 東京はクモのメッカなのだという。「日本のクモ全1650種のうち、東京で全国最多の613種が確認されています。調査する人が多いこともありますが、ここは南と北の異なる生態系が交わるエリアでもあるからだと思います」

 後日、新海さんの写真ギャラリーを訪ねると、白い壁に1匹の小さなクモがいた。

 「ハエ捕り用に放し飼いにしてるんです。かわいいやつでしょ」と笑った。(石塚健司)

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