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【ゆうゆうLife】家族がいてもいなくても(565)人が「場所」を作る

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 東京で新しい「孫娘」の登場イベントを終え、那須に戻ってきたら、こちらも新入居者の登場でなかなかに盛り上がっていた。

 「サ高住」という高齢者のコミュニティーは、みんなが静かに暮らすところだと想像しがちだけれど、そうでもない。

 実に、起伏に富んでいる。

 去る人あれば来る人も、で思った以上に変化していく。

 先日「ここは個性的な方が打ちそろっている」などと言ったら、「そうね。ここに残っちゃった人たちだからね」なんて言われた。

 例えば、去る者の理由は「網戸に張り付く蛾(が)」とか、「風の音」とか、「牧場の臭い」とか、「なんでも自立主義」とか、「交通不便」とか…。

 聞いていて笑えてきた。

 逆に「虫がいるところが好き」「牧場の香りに故郷を思い出す」「風が哭(な)くのが胸にしみる」「管理されない自由が何よりもいい」とか、ま、私のことですが、誰かの去る理由が、誰かの来る理由だったりする。

 そういえば、入居のとき、「バスの路線から外れている場所なんですか?」と驚いたら、「そうよ。不便を楽しんでね」と、こともなげに言われたなあ、と思う。

 今や住み慣れた家の近所にいくらでも高齢者向けのマンションやデイホームや施設ができる時代。

 都会でずっと1人暮らしを続けられる時代にもなりつつある。

 何も過疎地で廃校小学校の再興会社を立ち上げて、市場を作ったり、喫茶店をやったりしなくてもねえ、と言ったら、「その元小学校で人形劇団を立ち上げる人もいるしねえ」と言われてしまった。

 思えば私も劇団の拠点を元小学校の2階から1階に引っ越し中。ここのところ、メンバーとひたすら肉体労働に励んでいる。

 類は友を呼ぶ、とはこういうことなのだろう。

 そんな中、久しぶりの週末、居酒屋に変身したコミュニティーの食堂にシャンパン持参で飲みに行ったら、その夜は新入居のご夫婦を中心に、耕運機やチェーンソーの話で盛り上がった。

 北海道網走の原野で1人暮らしをしていた彼と、黒姫山で1人暮らしをしている彼女と、白馬でペンションをやっていたご夫婦と…。

 話を聞いているだけで、なんとたくましい人たちなのか、とあっけにとられつつも、なにやら心強い気持ちになった。

 場所は人が作るのだと、しみじみ実感した夜だった。(ノンフィクション作家・久田恵)

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