【ニュースの深層】パンドラの箱を開けた? 「心は女子」学生受け入れ決めたお茶の水女子大 「女子大の存在意義」議論の呼び水に
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国立のお茶の水女子大(東京都文京区)が全国に先駆け、平成32年度から戸籍上は男性でも自身の性別が女性と認識しているトランスジェンダー学生の受け入れ決定に踏み切った。他大学にも波及しそうだが、施設整備や受験資格の確認など課題も残る。文部科学省内では「男女共学化議論の呼び水になりかねない」(幹部)との声もあり、減少傾向にある女子大の存在意義も改めて問われそうだ。
受験資格の確認は?
「検討に時間はかかったが、お茶の水女子大で学びたい人を温かく迎え入れたい」。室伏きみ子学長は7月10日の記者会見で、平成28年度から2年間にわたり在学生らへの説明会を複数回重ねるなどして、今回の決定に至った経緯を説明した。
これまで「女子」としてきた受験資格を今後、「戸籍または性自認が女子」と変更し門戸を広げるが、課題はある。更衣室やトイレなど受け入れに向けた具体的な施設整備のあり方を今後詰める必要があり、受験資格の確認にも注意を要する。出願期間前に診断書があれば提出してもらい、自己申告の場合も今後設置する委員会で総合的に判断する方向だが、受験資格の線引きに曖昧さが残りかねない。
全国の女子大に影響
お茶の水女子大の決定は他大学の動向にも影響しそうだ。「まだ正式に決まっていないが、前向きに検討している」と話すのは国立の奈良女子大(奈良市)の担当者。29年9月に大学理事などで構成するワーキンググループを立ち上げ、問題の洗い出しを行っている。公立では群馬県立女子大(群馬県玉村町)がお茶の水女子大の決定を受け、学内委員会で検討を開始。福岡女子大(福岡市)は「1年生全員が寮生活をするため保護者の理解などを含めクリアすべき課題は多い」(担当者)。状況把握のため他大学の情報収集に乗り出している。
女子教育を大学の理念に明確に掲げる私立でも検討は進んでおり、津田塾大(東京都小平市)、日本女子大(同文京区)、東京女子大(同杉並区)などで29年から議論している。
女子大の存在意義とは?
ピーク時には100近くあった女子大だが、定員割れに伴う学生募集強化や統廃合などを背景に共学化が相次いだ。29年度の学校基本調査では、女子大数は国立2校、公立2校を含め計76校。780ある大学の約1割にとどまる。
お茶の水女子大の記者会見では女子大の存在意義に関する質問も相次いだが、室伏学長は「共学化の議論はなかった」とし、「女性が社会で男性と同等に暮らせる状況にはなっていない。女子大の存在意義はまだまだある」と強調した。
ただ、27年には福岡女子大に入学願書を受理されなかった福岡市の男性が、不当な性差別で違憲だとして、不受理処分の取り消しなどを大学側に求め提訴したことがある。その後、訴訟継続が困難などとして取り下げられたが、公立女子大の存在意義を問うものとして注目された。
お茶の水女子大の決定について文科省幹部は「共学化に向けた議論へのパンドラの箱を開いた。今後、公金で運営される女子大の存在意義が広く問われる場面もあるのではないか」と指摘する。
元東京都国立市教育長で教育評論家の石井昌浩氏は「これだけ男女共学が進んだ時代に、女子大が存続する理由はよくわからない。この際、女子大という枠組みを問い直すべきではないか」と話している。
お茶の水女子大学
明治8年に女性のための日本初の高等教育機関「東京女子師範学校」として創設。昭和24年、国立学校設置法の公布・施行に伴い、お茶の水女子大学に。現在は文教育、理、生活科学の3学部がある。平成29年6月時点の学生数は大学院生らを含め2965人。
