PR

【フード 食・名店】なにわ翁 技術と材料で価値生み出す

PR

看板メニューの「ざるそば」は、小麦粉が2割の二八そば
看板メニューの「ざるそば」は、小麦粉が2割の二八そば

 うどんが主流の大阪でも、おいしい手打ちそばを味わいたい。そんな願望に、大阪市北区の「なにわ翁(おきな)」が応えてくれる。かつて大阪天満宮の参拝客でにぎわった場所に位置し、創業は昭和5年。定食屋だった店を、3代目の現店主がそば一本で勝負する名店に。厳選された材料と伝統のだしで生み出す味を訪ねた。(藤井沙織)

 ◆「翁」との出合い

 木の柱にしっくいの壁。流れた年月の長さを感じさせるあめ色の空間に、テーブルのあじさいとヤマボウシが色を添える。

 平日は常連客でにぎわい、休日になれば評判の味を確かめたいと、全国から多くの客が訪れる。「界隈(かいわい)の方と遠方の方、両方にかわいがっていただいているのがうちの強みです」。そう語るのは、店主の勘田拓志(かんだたくじ)さん(47)。祖父の代から続くうどんとそばの定食屋を、平成11年にそば一本の店に生まれ変わらせた。「自分の技術、自分で選んだ原材料で価値を生み出したかったんです」

 大学を卒業し大阪で2年修業した後、弟子入り先を探して各地のそばを食べ歩いていたとき、山梨県北杜市にある名店「翁」のそばと出合った。「食べたことのない味、技術の高さに圧倒されました」。店主の高橋邦弘さんのもとに住み込みで修業し、1年で独立と屋号の使用を許された。

 ◆師と祖父の味

 そばの実は自ら産地に出向いて厳選し、季節に応じて配合を変える。以前は殻を剥(む)いた実を仕入れていたが、3年半前に製粉所を備え、殻付きの「玄そば」から毎日剥きたてを製粉できるようになった。

 同じ頃から、水は数十年ぶりに復活した大阪天満宮の井戸水を使用。「初めて使ったとき、つゆからしょうゆの角がとれ、そばには弾力が増して驚きました。もう打っているときから、ぽむぽむしていました」

 看板メニューのざるそばは、もちもちしていてのど越しが良い。鰹(かつお)の味わい豊かなつゆは、シャープなしょうゆ味の中に爽やかさも。わけを尋ねると、「ワインビネガーが入っています。師匠から教わった味です」と誇らしげに語る。

 ところがお客さんの中には、つゆに薬味のわさびを一気に入れてしまう人も。「『ああ~! つゆが…!』と思いますが、口には出しません」と苦笑い。わさびは箸でちょこっとつまみ、そばと一緒に食べるのがいいそうだ。

 一方のかけそばには「祖父の代から受け継いだ大阪のお出汁(だし)」を使う。そばのおいしさとともに、関西ならではのやさしい甘みが味わえる。

 ◆弟子育てあげ

 今では客の途絶えない人気店も、当初は苦難の連続だった。以前の定食の値段で食べられるのはざるそば一枚。怒って離れていく客もいた。かたや翁の名を聞いて食べに来た客からは、箸袋に「ほんまに翁で修業したんか」などと書かれることもあったという。

 「だまらしてやる」。そんな思いでそばを打ち続けるうちに、動きに無駄がなくなり、スピードもあがった。いつしか批判の声はなくなっていった。

 弟子も取り、これまでに8人を独立させた。現在の弟子は2人で、「最近は求人を見て店に働きにくるだけで、職人を志す人が減りました」と、そば業界の行く末を憂う。「弟子たちの店の繁盛ぶりからして、たぶん僕は教えるのがうまいんやと思います」と自賛を交えて訴えた。「やりがいのある世界。手に職を付けたいという若者はぜひ、門をたたいてほしい」

                  

 ■なにわ翁 大阪市北区西天満4の1の18。午前11時半~午後8時(7時半ラストオーダー)。ざるそば900円、鴨ざるそば1700円。季節限定メニューに、冷やし水なすそば1600円(夏季)、かきそば1700円(冬季)など。一品料理やお酒もある。日・月曜定休(月曜が祝日の場合は営業)。(電)06・6361・5457。

                  

 ご感想・情報

 ▽Eメール life@sankei.co.jp

 ▽FAX 03・3270・2424

この記事を共有する

おすすめ情報