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「精神腫瘍科」の設置増加 がん患者と遺族の心癒やす

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「精神腫瘍科」の設置増加 がん患者と遺族の心癒やす

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埼玉医科大の大西秀樹教授(左)と石田真弓講師 1/1枚

 日本人の死亡原因のトップを占める「がん」。がんで大切な家族を亡くした場合、そのショックから立ち直ることができない遺族が少なくない。そんな遺族をサポートする態勢が医療機関で整いつつある。全国に先駆けて埼玉医科大国際医療センター精神腫瘍科に「遺族外来」を立ち上げた大西秀樹教授に聞いた。

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 ◆カウンセリングで

 各地のがん治療の拠点病院で、「精神腫瘍科」という、あまり耳慣れない診療科を設置する例が増えている。「がん」と診断されると、多くの場合、落ち込んだり、不安で眠れなくなったりする。進行がんで余命は長くないと宣告されれば、鬱状態になるのも当然といえるだろう。そんなとき、がん患者本人やその家族の心のケアにあたるのが精神腫瘍科だ。

 さらにがん患者の家族は、患者を看取った後も、そのショックからなかなか立ち直れず、さまざまな心の問題を抱え続ける人が少なくない。そうした遺族のために、大西教授は臨床心理士の石田真弓講師とともに同医科大に「遺族外来」を立ち上げ、継続的にケアにあたっている。

 遺族外来では、まず遺族の話を聞き、問題を把握する。鬱病を発症していると診断されれば投薬治療も行うが、ほとんどはカウンセリングを中心とする精神療法で、遺族の話に耳を傾けることが多いという。また、一般の外来のほかに、石田講師が中心となって年に4回程度の集団療法なども行っている。

 ◆傷つく言葉に注意

 受診の対象は、がんで身内を失った遺族に限っているが、年間20~30人が受診。その9割は、別の医療機関で治療を受けていた患者の遺族だという。訪れる遺族の中には、1回の受診で問題を解決できる人もいれば、長期にわたり通院している人も少なくない。

 遺族の中には、周囲の何げない言葉に傷つき、遺族外来を訪ねてくる人も多いそうだ。とくに遺族を傷つけるのが「なぜ、病気に気がつかなかったのか?」という問いだ。がん患者を看取った6割の遺族が聞かれた経験があるという。

 遺族は「私が至らなかったせいではないか」と自分で自分を責める気持ちになりやすい。そこに「なぜ気づかなかったの?」と尋ねるのは、自責の念を強めてしまう。「がんでも自覚症状がない人もいれば、小さながんが次々に転移してしまうような場合もあります。早期に発見ができなかったのは、決してご家族のせいではありません」と大西教授は強調する。

 ◆ただ、聴くだけで

 ほかにも「あなたがしっかりしないとダメ」「気持ちの整理はついた?」「あなたより大変な人はいるのよ」といった言葉は、励ますためにかけたつもりでも、逆に遺族を苦しめてしまうという。「遺族が必要としているのは“誠実な関心”です。周りの人は、詮索や励ましよりも、ただそばにいて遺族の言葉に耳を傾けるだけでいいのです」