産経ニュース for mobile

「お寺の本堂レンタル」 都会の“異空間”人気も貸し出す寺院の事情とは

記事詳細

「お寺の本堂レンタル」 都会の“異空間”人気も貸し出す寺院の事情とは

更新
宝珠院の本堂でのイベント。落語会=東京都港区 1/7枚

 お寺の本堂貸します-。近くにあっても、なかなか足を向けない存在になっているお寺。もっと親しんでもらおうと、本堂の一般への貸し出しが始まった。街中にあって静寂な空間であるお寺は、ストレスの多い現代人には新たなオアシスとなるかもしれない。一方、お寺の側は深刻な事情を抱えてのサービスでもあるようだ。

<< 下に続く >>

ヨガ教室から落語会まで

 宝珠院(ほうしゅいん)(東京都港区)は、徳川将軍家のぼだい寺である増上寺の塔頭(たっちゅう)。東京タワーのすぐ近くという、まさに都心型の寺院だ。

 2017年5月から本堂の貸し出しを始め、8カ月で約40件の利用があった。ヨガやアロマの講習会、アクセサリー教室、あるいは、落語会や三味線のコンサートが催された。

 参加者からは「都会の真ん中にある異空間が気に入った」「講師や演者との参加者との距離感がちょうどいい」と好評。一方、イベント主催者も、都心の一等地を1時間800円というリーズナブルな料金で借りられるメリットがある。

 宝珠院の場合、本堂が比較的小体で収容人数が20人ほどであることや、改修中であることも重なって料金が抑えられている。

 宝珠院の森俊人住職は「利用料の収入が目当てではなく、お寺を知ってもらうために実施しています。イベントの中には複数回実施されたものもあり、イベント主催者の中にはリピーターもいて、お寺が活気づいたと肌で感じています」と話す。

消滅寺院にならないために

 宝珠院は、寺院運営コンサルタント企業のアンカレッジ(東京都港区)の提案で本堂の貸し出しを始めた。

 文化庁によると、全国の寺院の数は7万7316(15年末現在)。これは約5万5千軒あるコンビニエンスストアより多いが、後継者不足が深刻で、すでに4分の1にあたる約2万寺院は住職のいない「無住寺」であるとされる。

 核家族化などで簡素な葬儀を望む人が増えていることも、お寺の経営環境の厳しさに拍車をかけている。

 同社によれば、17万宗教法人のうち約36%にあたる6万法人は「消滅可能性寺院」なのだという。

 こうした中、同社は、いかに寺院に人を呼び戻すかを軸に経営の助言を行っている。たとえば、墓石よりカジュアルな埋葬である「樹木葬」の導入などで、本堂の貸し出しはそうした提案の中の1つ。宝珠院のほか、道往寺(同)、本昌寺(京都市上京区)の3寺院が始めている。

 寺院側は、レンタルスペースのマッチングサイトに登録したり、自社のホームページで告知をしたりしている。

 同社広報担当の鈴木加奈子さんは「かつて子供の遊び場だったころのように、寺院を再び“開かれた”場所に戻すことが、今後の寺院経営に欠かせない第一歩」だという。

 そのために、住職が地域住民らと交流する機会を設けようというのが、この本堂レンタルビジネスの根本だ。鈴木さんは、イベントの前に住職による法話の時間を設けることなどを推奨している。(文化部 櫛田寿宏)

 宝珠院は20人ほどの収容スペースであることなどからレンタル料は1時間800円だが、道往寺などは本堂が広いうえ法事などを営む会館も使えるため時間あたり1万円。寺院によって利用料は異なる。

写真ギャラリー

  • 宝珠院の本堂でのイベント。三味線のコンサート=東京都港区
  • 宝珠院の本堂でのイベント。イベントの案内もカジュアルに=東京都港区
  • 宝珠院の本堂でのイベント。ブレスレット作り=東京都港区
  • 宝珠院の本堂でのイベント。こけ玉作り=東京都港区
  • 宝珠院の本堂の内観=東京都港区
  • 本堂の貸し出しを行っている宝珠院=東京都港区