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【被災地を歩く】現状をSNSで中東へ発信 投稿に高い関心 交流深める

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現状をSNSで中東へ発信 投稿に高い関心 交流深める

被災地を歩く更新
復興の現状に関する意見交換会に参加するサウジアラビアのメディア関係者=11月30日、宮城県石巻市 1/2枚

 見栄えのいい料理、瀟洒(しょうしゃ)なポートレート、美しい海や空…。「ツイッター」や「インスタグラム」などのSNSのタイムラインをスクロールすれば、世界中の人々の日常や旅先での写真が並ぶ。「インスタ映え」が今年の流行語大賞になったように、人気コンテンツはときに、既存メディア以上の拡散力を持つ。中東世界を中心に多くのフォロワー(閲覧者)を抱えるサウジアラビアのメディア関係者3人が宮城の被災地を訪れた。彼らの目に、復興の現状はどう映ったのか。

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 2泊3日の被災地視察は、国際交流基金が企画した。宮城県内の被災地では震災直後の平成23年5月、南三陸町の代表者らがサウジの首都リヤドを表敬訪問。今年1月には県LPガス協会が国営石油会社のサウジアラムコに、当時の緊急支援に対する表彰式を仙台市で開くなど、震災を機に交流を深めている。

 今回はデジタルメディア関係者が被災地を訪れ、ICT(情報通信技術)を活用する法人や団体を視察。現場でディスカッションや意見交換会を行った。

イチゴ×IT

 先月30日、一行は山元町を訪れた。東北最大のイチゴ生産地として名をはせる同町。町内の栽培ハウスは津波で甚大な被害を受け、約9割が流失。それから6年8カ月、法人や個人の生産農家が立ち上がり、今ではハウスが立ち並ぶ風景が取り戻されつつある。

 その中のひとつ、生産法人「GRA」が管理する「イチゴワールド」では、ハウス内の温度や湿度、二酸化炭素量などの管理に、ICTが活用されている。生産者間でデータを収集・共有し、必要なデータを全て公開。橋元洋平副社長(40)は「農業はこれまで経験や勘によるところが大きかったが、それでは次世代に引き継げない。大規模化にはIT化が欠かせなかった」と話す。

 ソフトウエア開発に携わるエンジニアのマゼン・ルカイニさん(28)は設備を見た上で、「サウジは土地も資金も潤沢にある。(中東地域では)特にヨルダン西岸部が宮城と気温も似ていて、イチゴ生産には最も適した土地だと思う」と話す。その上で、「ここのシステムをそのまま転用することも可能」といい、宮城からサウジへの技術輸出も見込めるという。

 橋元副社長は「日本だけでなくインドでもイチゴの生産ができている。これからもいろんな地域で生産できれば」と期待を寄せた。

 イベントで交流も

 「震災後、ツイッターで災害の被害の様子を写真や動画で伝えるユーザーが増え、行政でもSNSを確認する部署ができました」

 午後には石巻市の「IRORI」に場所を移した。津波で被災したガレージを改装したカフェで開かれた意見交換会には、河北新報の古関良行・石巻総局長(51)が参加。震災前後の報道のあり方や、SNS活用の現状を話した。

 一般社団法人「イトナブ」の加藤奨人さん(25)は、小中学校でのIT教育などの活動を通じて、ソフトウエア開発やデザインを学ぶ機会を提供。石巻から千人のIT技術者を輩出することを目指して活動している。ルカイニさんとはこの日、サウジと石巻でチームを組み、プログラミングのイベントを行う約束を取り付けた。

 3人はこの日、スマートフォンを手にSNSでライブ配信、写真投稿を続けた。「こんなにコメントがついているよ」。コメント欄を見ると、中東のフォロワーから1つの投稿に数百単位の反応があり、関心の高さを物語っていた。

 親日家の団体で代表を務めるアートディレクターのシャーザ・アルドゥースさん(30)は「単なる復興というより、人が喜ぶ新たなサービスを行っていることに感銘を受けた」。

 ネット媒体で30万人の閲覧者を抱えるマガジン社の編集長、ワリド・アルタイラさん(35)は「6年という短い期間での復興の早さに驚いた」と話した。(千葉元、写真も)

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  • ICTを活用したイチゴ栽培に取り組む農園を視察するサウジアラビアのメディア関係者=11月30日、宮城県山元町