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【話の肖像画】東京ガス会長・岡本毅(1) 神は「現場」に宿る

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東京ガス会長・岡本毅(1) 神は「現場」に宿る

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東京ガス・岡本毅会長 1/1枚

 〈4月の都市ガス小売り全面自由化で、競争が激化するガス業界の先頭に立つ。原点は入社3年目に配属された営業所の“現場”だ〉

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 東京ガスは地域密着型の「現場第一主義」の路線を貫いています。私にとっての原体験は昭和47年から丸2年間勤務した東京・練馬の営業所でした。

 それまでは入社以来、本社の企画部に配属され、経営計画や予算の策定など、100万円単位の仕事をしていました。会社全体を知るという意味では勉強になりましたが、今振り返ると勘違いしていたと感じます。営業所の最前線に異動になり、大きなカルチャーショックを受けました。

 ガス工事から器具販売、集金まで何でもやる拠点で、検針一つでも楽な作業はありません。夏の日差しやいてつく寒さの中でパイプを埋める穴を掘ったり、縁の下に潜り込んでガスの漏洩(ろうえい)場所を検査したり…。初めて実際の現場を知りました。当時は営業所の窓口で料金を支払う人も多く、1円単位の現金をいただき、領収書を切った。「売上高が何千億円といっても、この一円玉から始まっているんじゃないか」と改めて気付きました。経営者になっても、一円玉の重みと現場で働く人が原点です。

 〈口癖は「神は現場に宿る」。社長就任後も営業拠点を回り、社員らと真摯(しんし)に向き合ってきた〉

 平成14年6月に総合企画部長として企画畑に復帰し、会社の総合政策を決める部署だからこそ現場を大切にしよう、と考えました。「神は細部に宿る」という言葉をもじって、「神は現場に宿る」と言い始めたのはそれからです。社長就任後に現場の“神様”にあいさつに行こう、と思って始めたのが「現場を語ろう」という取り組みでした。

 部長ら管理職の同伴なしで営業や工場、工事の拠点に出向く。最初は所長らも含め全員に「一緒に頑張ってください」と話します。が、それだけではつまらない。終業を待って、課長より下のグループ長級を社員食堂に集め、缶ビールなどで乾杯してからが本番です。15分もすると酔いもあってか「さっきは言えなかったけど」と、どんどん意見が出てくる。聞いた話は記録をとらず、自分の中だけで業務改善などに生かしました。

 社長時代の4年間で約70回開き、直接会えたのは累計約700人。約8千人いる社員のほんの一部で、限界はあります。それでも、現場を重視する姿勢を少しでも伝えたかったし、参加者から周囲の従業員にも広がればいいなという考えで続けました。

 〈昨年6月からは日本ガス協会会長として業界を代表し、小売り全面自由化に向き合う〉

 自由化で業界構造が変わっても、安定供給や安全確保が重要です。既存のガス事業者は昨年の熊本地震でもいち早く応援態勢を組みました。日本ガス協会として「最後のとりでになる覚悟を持ち続けよう」と言い続けています。(聞き手 会田聡)

                   

【プロフィル】岡本毅

 おかもと・つよし 昭和22年9月23日、京都府生まれ。一橋大経済学部卒業後、45年4月に東京ガス入社。主に液化天然ガス(LNG)調達を担う原料部畑を歩み、インドネシアから東ガス初の自社管理船による輸入プロジェクトを手がけるなど調達先の拡大を進めた。平成22年4月から社長としてガスパイプライン網の整備や発電事業の拡大に注力し、26年4月に会長。昨年6月から日本ガス協会会長も務めるほか、経団連副会長として教育や雇用の政策提言にも携わっている。